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【講演レポート】製造業の重要システム運用に、オブザーバビリティはどう効くのか

2025年11月26日に開催された製造業向けセミナー「サプライチェーンの強靭化を後押しするDX基盤構築」での当社講演の要点を整理したレポートです。

20251126日に開催された「サプライチェーンの強靭化を後押しするDX基盤」セミナーにて、当社社員が講演を行いました。

本コラムは、製造業の情報システム担当者を主対象に、サプライチェーンの分断リスク対策に対する課題認識と解決アプローチについて要点を整理したものです。

NTTテクノクロスが通信業で長年培ってきたオブザーバビリティ*の経験を踏まえ、製造業におけるシステム運用改善のヒントになれば幸いです。

*オブザーバビリティとは
ログ・メトリクス・トレースなどのデータを活用し、システムの動作状況や問題の原因を迅速に特定するための仕組み



1.はじめに - なぜ今、オブザーバビリティ(可観測性)とAIが重要か

近年、地政学的リスクの高まりや自然災害、サイバー攻撃の巧妙化により、原材料の調達遅延や物流の停滞、システム障害などが、生産ラインや関連業務の一時停止・分断を引き起こすリスクがますます顕在化しています。

製造業のサプライチェーンは多拠点・多段階にわたり複雑化しており、それを支えるITシステムもオンプレミスとクラウドの混在、IoT/OTの導入拡大も相まって、システム停止やセキュリティインシデントが事業に与える影響が極めて大きくなっています。

実際に、製造業において以下のようなシステム障害事例が発生しています。

・事例①食品メーカー:電源ユニット障害

ある食品メーカーでは、電源ユニットの老朽化により障害が発生し、受発注システムの電源故障が生じました。この障害により生産ラインの停止だけでなく、出荷の遅延や取引先への補償対応に追われる事態となりました。突発的な故障がもたらす影響の大きさと、迅速な対応の重要性が浮き彫りとなる事例です。

・事例②精密機器メーカー:検査装置障害

精密機器メーカーでは、検査装置の設定誤りにより検査装置間の通信断が発生しました。これにより出荷停止が発生し、取引先への補償対応に多大な工数が割かれる結果となりました。ログや通信情報の膨大さから真因を迅速に特定できなかったことが、被害拡大の一因となっています。



こうしたシステム障害は、直接的なライン停止の被害だけでなく、機会損失や取引先への補償など二次的被害にも波及し、数億円規模もの損害につながる事例も報告されています。

そのため製造業におけるリスク予防の観点から、サプライチェーンを構成する重要システムの障害を未然に防止することが求められています。さらに、万が一障害が発生した場合に備え、障害をすばやく検知し、迅速に対応するための基盤整備が不可欠であり、これらを確実に実施するために、オブザーバビリティとAIの活用が有効だと考えています。

2.システム運用・監視における課題

当社は、通信業を中心にシステムの運用監視に携わってきた経験から、システム運用・監視の現場では、以下のような課題が一般的に顕在化していると捉えています。これらには、製造業の複雑なシステム環境にも共通する課題があるのではないでしょうか。


・突発的な故障がシステム全体を停止させるリスク

通信業ではネットワーク機器の予期せぬ故障が、通信サービスの停止という甚大な被害を引き起こします。一方製造業では、生産設備や関連システムの故障が生産ライン全体の停止を引き起こし、納期遅延や機会損失につながります。いずれも複雑に連携したシステムにおいて、一つの障害が大きな代償を伴う事故につながります。

・大量のログやアラートの中から真の原因を見つけ出す難しさ

膨大なログやアラート情報に、重要な兆候が埋もれ、障害の根本原因を特定するまでに多くの時間と労力を費やすことがあります。オブザーバビリティや自動化された検出機能を持たないシステムでは、迅速な原因究明と復旧を実現することは容易ではありません。

・事象調査や解析スキルが特定の熟練者に依存

長年の経験や専門知識を持つ技術者や熟練者に頼らざるを得ない状況は、担当者の不在や異動に伴い対応が滞るリスクがあります。属人化が進むと、担当者の不在時や急な対応が求められる場面で対応が遅れ、問題の長期化を招く恐れがあります。

・日々進化するサイバー攻撃への備えが追い付かない

サイバー攻撃の手法は日々進化しており、従来のパターンに基づく監視だけでは新たな攻撃を検知しきれないリスクがあります。製造業においては現場のIoTやスマートファクトリー化の進展により、従来の制御システムもサイバー攻撃の標的となっています。



これらの課題を解決するには、単なる監視ツールの導入だけでは難しく、「障害の未然防止(予兆検知)」、「迅速な障害対応」、「未知なる脅威への備え」を統合的に実現するオブザーバビリティ(可観測性)とセキュリティ基盤の整備が重要です。

次章では当社の強みであるオブザーバビリティに焦点を当て、前述したシステム運用・監視における課題を解決する「予兆検知による障害の未然防止」と「インシデント発生時の初動の効率化と迅速な障害対応」の事例をご紹介します。

オブザーバビリティを備えたセキュリティ基盤に関する詳細にご興味のある方は、Elasticsearch担当へお問い合わせください。

3.AIを活用したオブザーバビリティに関する課題解決事例

当社は、Elasticsearchの基盤上に、生成AIや機械学習をオブザーバビリティに応用し、異常検知から初動のオペレーションを効率化した導入実績があります。

ここでは、前章で挙げた課題もふまえ、以下の2点について通信業での課題解決事例をご紹介します。

①予兆検知による障害の未然防止

②インシデント発生時の初動の効率化と迅速な障害対応

3-1.予兆検知による障害の未然防止

システム障害を未然に防ぐ最も効果的な方法の一つが「予兆検知」です。しかし、監視項目が膨大で、監視ルールや閾値設定が属人化・サイロ化し、異常兆候の見逃しや対応の遅れが発生しやすい状況となっています。

この課題を解決するために、あらゆるログやメトリクスを一元的に収集・分析・可視化できるElasticsearchを活用し、Elasticsearchが強みとする強力な検索・分析機能と機械学習を組み合わせることで、従来の監視では難しかった異常の早期発見を実現しました。

導入前の課題

・監視対象・監視項目が多岐にわたり、監視ルールや閾値がサイロ化・属人化している

・通常ログを含めた兆候の把握が困難で、故障や障害の傾向を事前に検出できない

・予兆検知ができないため、障害発生時の稼働・コスト負担が大きい

導入した仕組み

・全機器のログ(INFOログを含む)をElasticsearchに蓄積し、機械学習(アノマリー検知)で「普段と異なる動作」を抽出

・構成管理情報を連携し、予兆検知時に影響範囲をダッシュボード上に可視化

・予兆ログを抽出し、ベンダーへ解析を依頼、必要に応じて検知対象から除外を実施

導入効果

・過去障害事例に基づく有用性確認により、大規模障害の未然防止が期待できる

・アノマリー検知、全機器ログ蓄積、構成管理情報連携の組み合わせにより、事前対応で稼働・コストを抑制



Elasticsearchを活用した予兆検知により、「2.システム運用・監視における課題」にて挙げた「突発的な故障がシステム全体を停止させるリスク」を低減することができます。

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3-2.インシデント発生時の初動の効率化と迅速な障害対応

障害発生時の初動対応を効率化し、迅速にインシデントを検知・対応することも重要です。

Elasticsearchの高速検索機能やダッシュボードによる可視化、アラートの統合管理を活用し、初動対応のスピードアップと精度向上を実現しました。

導入前の課題

・同時多発の大量アラートメールにより重要度の判別が困難

・システム構成が複雑で影響範囲・原因特定に時間がかかる

・対象機器にログインしてからログ抽出・検索するため遅延

導入した仕組み

・Elasticsearchによるログ集約・高速検索

・構成管理情報と連携した障害影響範囲の即時算出

・LLM(大規模言語モデル)を用いたアラートの重要度判定と一次切り分け

・課題管理システムへの自動登録による調査着手の自動化

導入効果

・アラート発報からインシデント検知までを従来の約100分から15分以内へ短縮

・初動のスピードアップによりMTTR(平均復旧時間)短縮と被害拡大防止を実現



Elasticsearchの高速検索やLLMによるアラート重要度判定の活用により、「2.システム運用・監視における課題」にて挙げた「大量のログやアラートの中から真の原因を見つけ出す難しさ」や「事象調査や解析スキルが特定の熟練者に依存」の課題解決に期待できます。

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4.まとめ

製造業の情報システム担当者は、日々のシステム運用において、多くの困難に直面されていることと思います。製造業におけるシステム運用の難しさは、単なる技術的な課題にとどまらず、事業の生命線である生産ラインの停止によって納期遅延や顧客信頼の損失といった深刻な影響を伴うものです。私たちは、このような単一の技術だけでは解決できない複雑な課題に対して、データ基盤、AI、そして運用プロセスを統合したアプローチが不可欠であると捉えています。

当社は、AI技術を活用したオブザーバビリティの実用化に先駆けて取り組み、従来の監視手法を超えたシステム運用自動化・高度化の推進に貢献してきました。

これまで培った大規模システムの開発・運用の経験を活かし、製造業の皆様の課題に向き合い、最適なオブザーバビリティソリューションを提供していきます。

Elasticsearchの導入検討から設計・実装・運用まで一貫して支援いたします。

ぜひお気軽にお問合せください。


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* 記載されている商品名・会社名などの固有名詞は一般に該当する会社もしくは組織の商標または登録商標です。
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