熱中症の基本情報 ~ 統計データと早期発見のポイント ~
近年、熱中症のリスクが深刻化する中で企業の熱中症対策が義務化されました。本コラムでは企業で必要な熱中症の予防・対策について解説します。
■はじめに
熱中症は予防できる病気でありながら、毎年深刻な健康被害、労働災害をもたらしています。気象庁のデータによると、日本の真夏日・猛暑日の日数は年々増加しており、熱中症は誰にでも起こりうる身近なリスクとなっています(※1)。
重要なのは、正しい知識があれば多くの熱中症は防げるということです。しかし、間違った思い込みや不十分な対策により、初期対応が遅れたり症状が重篤化したりするケースが後を絶ちません。熱中症による死傷災害は2年連続で1000人を超えており、職場での死亡災害は他の災害の5~6倍にも上ります(※2)。
また、 熱中症対策は令和7年6月から労働安全衛生規則の改正により事業者の義務にもなっています。本記事では、厚生労働省・環境省などの最新ガイドラインと科学的根拠に基づき、熱中症の基本的な理解から実践的な予防法、職場での緊急時対応まで、働く人の健康を守るために必要な知識をお届けします。
NTTテクノクロスでは、IT技術を活用した職場の健康管理をサポートするサービスやソリューションを提供しています。対策の参考として、また実際のサービス導入の検討にもご活用ください。
今回は熱中症の基本的な情報、症状と早期発見のポイントについて詳しく見ていきましょう。
■目次
- 熱中症の深刻な現状
- なぜ熱中症は命に関わるのか
- 段階別の症状と早期発見のサイン
- よくある誤解と正しい知識
■熱中症の深刻な現状
総務省消防庁の統計によると、令和7年の熱中症による年間救急搬送者数は10万人を超え、調査が開始された平成20年以降で最も搬送人員が多い年となりました(※3)。
・図1-1「熱中症による年間救急搬送数のグラフ」
統計で特に注目すべきポイントは発生場所です。「熱中症は屋外で起こるもの」というイメージに反し、住居などの屋内での発症が全体の約4割近くを占めて最多となっています。これはエアコンの不適切な使用や電気代を気にした冷房の控えが主な原因と考えられます。年齢別では65歳以上の高齢者が57.1%で最も多く、体温調節機能の低下と暑さへの感覚鈍化が要因とされています。
また、道路工事現場や工場・作業所などの仕事場での発生は道路、屋外に続く10.5%ですが、令和3年以降、搬送人員が2倍近くまで増加し続けています。
これらの現状は、熱中症対策が社会全体、会社などの組織全体で取り組むべき重要課題であることを示しています。
■なぜ熱中症は命に関わるのか
人間の体は発汗による気化熱と血管拡張により体温を37℃前後の平熱に維持するシステムを持っています。しかし、高温多湿の環境では汗が蒸発しにくく、体温を適切に調節できなくなります。
大量の発汗によっても体温が低下せず体内の水分や塩分が失われてしまうと血液が濃縮され、血液を全身に送るために心臓に過度な負荷がかかります。
さらに体温が上昇して40℃を超えると脳の体温調節機能が停止し、発汗も止まってしまいます。これにより重要な臓器が高温に晒され、筋肉のけいれんや心臓や肝臓など重要臓器への血流の低下による機能不全、脳への血流が滞ることによる失神、意識障害が発生します(※4)。
・図1-2「熱中症のメカニズム」
こうした高温環境下に長時間いたことで生じた全身の障害、症状、体調不良すべてを総称して熱中症と呼んでいます。
このように、熱中症は単なる「夏バテ」ではなく、全身の臓器に影響を及ぼし、生命に関わる危険な疾患です。
■段階別の症状と早期発見のサイン
熱中症は症状の重症度により3段階に分類され、早期発見と適切な対応が生命を救う鍵となります。
軽度(I度:熱失神・熱けいれん)
めまい、立ちくらみ、筋肉痛、手足のしびれ、大量の発汗。「立ち上がった時のふらつき」や「いつもより多い発汗」といった症状が見られます。
この段階では涼しい場所での休憩と適切な水分・塩分補給など応急処置が必要となります。適切な処置により多くの場合問題なく回復することができます。
中等度(II度:熱疲労)
軽度の症状に加えて頭痛、吐き気、嘔吐、強い倦怠感、集中力の低下。「なんとなく体がだるい」、「頭がぼーっとする」などの曖昧な症状も、脱水に伴い生じる症状として熱中症を疑う重要なサインです。
基本的に医療機関への搬送、治療が必要となります。
重度(III度:熱射病)
意識障害、けいれん、高体温(40℃以上)、発汗停止など。
生命に関わる緊急事態です。「呼びかけへの反応が鈍い」、「歩行がふらつく」、「汗が急に止まる」のは危険な兆候であり、迷わず救急車を呼んで緊急時の対応をとってください。
・図1-3「熱中症の症状3段階」(※5)
■よくある誤解と正しい知識
熱中症に関する誤解は、時として生命に関わる危険な判断につながります。正しい知識で健康を守りましょう。
1. 「汗をかけば安心」×
大量の発汗は脱水症状の前兆です。汗と一緒に失われる水分と塩分の両方を適切に補給することが不可欠です。
1時間にコップ1杯(200ml)程度を目安に水分補給をしましょう。
2. 「屋内は安全」×
統計上、熱中症の約4割は屋内で発生しています。風通しの悪い部屋や高湿度の環境では気温28℃以下でも熱中症の危険があります。エアコンとともに扇風機などを併用して環境を整えましょう。
3. 「若いから大丈夫」×
高温環境での作業・運動の負荷に身体が慣れていないうちに暑さに晒されると、年齢に関わらず誰でも熱中症を発症する可能性があります。暑さに身体を慣らす期間を前もって設けましょう(暑熱順化)。
4. 「喉が渇いてから水分補給すれば良い」×
のどの渇きを感じた時点で、すでに軽度の脱水が始まっています。気温やWBGT(暑さ指数)を確認し、のどが渇く前にこまめな水分補給を心がけましょう。
5. 「冷房を28℃に設定しておけば良い」×
冷房を28℃に設定しても、建物の構造や環境によっては室温が28℃まで下がるとは限りません。室温28℃はあくまでも目安です。温度計を確認したり、自身の体調を考慮しながら、適切な室温に調整しましょう。
■まとめ
熱中症の症状について知っておくことで、緊急維持にも落ち着いて対応することができるようになります。個人の対策と組織での健康管理を両立し、効果的な予防に繋げましょう。
NTTテクノクロスでは組織での健康管理を支援するためのサービス、ソリューションの開発・提供にも力を入れています。ヘルスケア、メディカルICT関連のサービスについては是非、弊社にお問い合わせください。
次回は熱中症の具体的な予防方法やIoTを活用した熱中症予防の新たなアプローチについて解説します。熱中症の基本情報を踏まえ、しっかりと対策を進めていきましょう。
参考リンク
※1 大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化
https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/extreme/extreme_p.html?select_elem=max35up
※2 令和6年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」
https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/001496511.pdf
※3 令和7年(5月~9月)の熱中症による救急搬送状況
https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/items/r7/heatstroke_nenpou_r7.pdf
※4 熱中症 環境保健マニュアル2022
https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_full.pdf
※5 厚労省の熱中症が発生する原理と発生時の措置
https://neccyusho.mhlw.go.jp/img/01.pdf
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