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企業ITの都市計画的デザインとは?

あるとき情報システム構築と建設って似ていると気がつきました。工程や設計やアーキテクチャという言葉も、様々なテクノロジーを組み合わせるという形状も、ゼネコンを中心としたビジネスプレイヤーの勢力図も似ています。情報システム産業は建設業を模倣して作られたというのは、よくいわれる話です。

こんにちは。NTTソフトウェアの安田 航(やすだ わたる)です。このブログのタイトルに書いた「企業ITの都市計画的デザイン」という言葉は、少し聞きなれないものかもしれません。そもそも都市計画という言葉から想起されるものはITではないと思います。写真はパリの夜景ですが、凱旋門を中心に放射状に配置される12本の大通りは、19世紀に整備されました。これによってパリ市内の物流機能は大幅に向上したといわれていて、こういったものは一般的にいう都市計画のイメージだと思います。

パリ市内

企業ITにも都市計画がある、というのがこのブログで書いていきたいお話です。発展する都市にはしっかりとした都市計画があるように、成長する企業の情報システムはしっかりとした全体像のデザインがあるのではないか?そんな着想から、企業ITの都市計画的デザインをNTTソフトウェアは提案しています。

さて、ブログことはじめの今回は、企業ITの都市計画的デザインって何なの?という話をしていきたいと思います。

企業ITの都市計画的デザインとは?

情報システムと建築物は似ている

あるとき情報システム構築と建設って似ていると気がつきました。工程や設計やアーキテクチャという言葉も、様々なテクノロジーを組み合わせるという形状も、ゼネコンを中心としたビジネスプレイヤーの勢力図も似ています。情報システム産業は建設業を模倣して作られたというのは、よくいわれる話です。

もう少しズームアウトして、個々の情報システムを個々の建築物と見立てると、企業全体は一つの都市と見立てることができます。例えば人の動線はデータの流通、避難場所を目的とした公園や耐火を目的とした運河の整備は情報セキュリティなどと共通点を見いだしていくと驚くほど、企業全体と都市構造は似ているのです。

企業全体と都市構造

企業ITの都市計画的デザインとは、企業の全体像を俯瞰する視座におけるビジネスと情報システムのデザインのことです。一つひとつの情報システムをデザインする手法は世の中に様々ありますが、企業の情報システムの全体像をデザインする手法が語られることは少ないようです。しかし、企業のビジネス活動は複数の(場合によっては数十、数百もの)情報システムが連動することで支えられています。ですから、ビジネスに寄与する情報システムを考えようと思ったら、企業の情報システム全体像の視座 ― 都市計画的デザインが不可欠です。

なぜ、今、企業ITの都市計画的デザインが必要なの?

今、都市計画的デザインが必要だと考えているのには、昨今ならではの3つの理由があります。

(1) クラウド登場以降の企業ITの変化

クラウド ― 特にSaaSが登場したことによる最も大きな企業ITの変化は、情報システム部門でなくても情報システムを導入できるようになったことです。情報システム部門を介さずに事業部門が独自にSaaSを導入するケースが増えています。これには事業部門自身がビジネスと情報システムを変化させやすくなるというメリットがあるのですが、一方で情報システム部門のメンバーが企業内のITの全体像が把握できなくなるというデメリットがあります。企業内のITの全体像は、以前は情報システム部門メンバー内の暗黙知として自然に考えられてきたものなのですが、これからは明示的に可視化した上でデザインしていくことが求められます。

(2) IoTなどのデジタルビジネス時代のビジネスモデル変革

昨今における強い企業とはビジネスモデルを変革させ続けられる企業です。しかし、その実現には狭い領域だけを見ていてはダメで、全体を俯瞰する視座が必要です。たとえば、最近はIoT(Internet of Things : モノのインターネット)が流行っていますが、ただモノをインターネットにつなぐという狭い領域だけを見ていても、ビジネスは何も変わりません。機器(モノ)から発せられた故障予兆情報をもとにメンテナンスを行うサービススタッフの業務プロセスや、機器(モノ)の利用量をもとに従量課金するための基幹システムの改修といった、広い範囲のビジネスや情報システムを連動させて進化させるデザインによって、ビジネスモデル変革が実現します。

(3) オムニチャネルなどの企業内の複数レイヤの統合

オムニチャネルとは店舗やインターネットなどの全てのチャネルを連携させて顧客にアプローチする考え方のことで、流通小売業を中心に注目されています。これを実現しようとおもったら、各チャネルの顧客データも、それに至るサプライチェーンも、リアルタイムな管理会計も、全て統合していくことになります。企業の全体像を見渡した上で、既存のビジネスも情報システムも再構築していく必要があります。

個々の情報システムという狭い視野ではなく、企業ITの全体像という俯瞰的な視座を持つことで、企業のビジネスを良い方向に変化させられるというのが、上記3つの時代背景から読み取れることです。そのために、今、企業ITの都市計画的デザインが重要だと私は考えています。

NTTソフトウェアと都市計画的デザイン

以前からNTTソフトウェアは、情報システムと情報システムを結ぶ情報システム間連携技術(EAI: Enterprise Application Integration)を得意としてきたIT企業です。この技術を先ほどの都市計画にたとえれば、駅と駅を結ぶ鉄道の線路に相当するものです。線路を作って、それぞれの駅(情報システム)をにぎわせ、ひいては都市全体(企業全体)を発展させる仕事をしながら、企業ITの都市計画的デザインのノウハウを深めてきました。日本企業の情報システムは構造的に縦割りになりやすく狭い視野に囚われがちですが、ここに全体を俯瞰する考え方 ― 都市計画的デザインを根付かせたいと考えています。日本企業の情報システムの考え方を見直してビジネスモデル変革に導く手法として、都市計画的デザインを当ブログで紹介していきます。

著者プロフィール
安田 航
安田 航
クラウドやIoTなどの新技術を、ただ導入しても企業はビジネスモデル変革に至れません。 その原因は日本企業独特の縦割り的な情報システムの考え方にあると見定めて、 独自の"都市計画的デザイン"でITとビジネスの変革を提言しています。 これらのノウハウを、著書『クラウド時代のエンタープライズ・アーキテクチャ(サイバー出版センター)』に執筆。 プライベートでは温泉や日本酒などの日本文化との新しい出会いを楽しみに、"輪行"で全国の海岸線を自転車で巡っています。