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「工場×IoT」が進化中。故障発見からAIによる予兆検知へ

IoTの波が工場に押し寄せている。産業用IoTである「IIoT」では、振動などをデータ化するセンサを取り付けてIoT化を実現。解析にはAI手法も使われる。例えば「ラムダバイブロ分析システム」は、機械の振動を計測し、見た目では分からない機械の消耗や劣化を検知できる。

PCやスマートフォンだけでなく、あらゆる機器がインターネットに接続されるIoT(Internet of Things)の波は、モノづくりの拠点となる工場にも押し寄せています。あらゆる機器がインターネットに接続されるIoT時代を迎えた今、工場内の設備機器についてもIoT化が進行中です。IoT対応ではない設備機器の場合も、振動などをデータ化するセンサを取り付ければIoT化は可能になります。

もっとも、これまでの工場がIT化に乗り遅れていたわけではありません。工場の管理オフィスにあるPCは本社やデータセンターとインターネットで接続されていましたし、生産設備や機器類は工場内専用の制御用ネットワークを通じて監視制御システムによって管理されていました。

現状、本社~管理オフィスのインターネットと工場内専用の制御用ネットワークは物理的に切り離されているケースが多く、情報システム(本社系)と制御システム(工場系)では構成も仕様も別になっています。インターネットを前提とするIoTが工場のIT基盤となるまでには少し時間がかかりそうです。

IoTの基本的な用途は稼働状況監視

工場内で使われる産業用IoTは「IIoT(Industrial IoT)」と呼ばれます。IIoTでインターネットに接続されるハードウェアは、生産設備とそのコントローラ、各種装置に取り付けられたセンサやアクチュエータなど。既存の制御システムをIIoTに対応させる場合は、分散制御システム(DCS)やプロコン(PLC)の位置でインターネットにつなぐ方法もしばしば採られます。

IIoTの最も基本的な使い方としては、対象とする製造装置の稼働状況監視があります。その仕組みは、情報システムにおけるサーバ稼働監視とほぼ同様です。製造装置にセンサを取り付け、信号を収集してから監視用サーバでリアルタイムに分析。停止または速度低下が発生している製造装置を発見したら、監視コンソールに警告を表示したり製造装置側の信号灯を点灯したりします。

ただし、IIoTによる稼働監視は、情報システムにおけるサーバ稼働監視のようには簡単に実現できません。

情報システムの場合、SNMP(Simple Network Management Protocol)のような業界標準の監視方式があるため、メーカーや機種が異なる機器が混在していても稼働監視は同じ方式で行えます。

しかし、生産設備の場合、標準的な監視方式というものはありません。最新の生産設備は稼働状況データを外部にデジタルで送り出せますが、旧式の生産設備では、電圧や回転数をアナログで出力する機能しかなかったり、そもそも稼働状況を信号として取り出せなかったりします。しかも、生産設備は何十年も使い続けることを想定して導入・運用されており、情報システムの機器のように3~5年で入れ替えるというわけにもいきません。

旧式生産設備も後付けセンサで監視が可能

そこで、現状のIIoT対応稼働監視ソリューションでは、対象となる生産設備に「音」「熱」「振動」「光」などの物理現象を検出するためのセンサを取り付け、そのセンサが発する信号を収集・解析するという間接的な方式が多く採用されています。この種のセンサは生産設備の動作に影響を与えませんので、稼働中の生産設備にも容易に取り付けられます。コントローラが内蔵されていない"アナログな"生産設備にも導入可能です。

センサを使った稼働状況監視ソリューションでは、生産設備になんらかの異常があると「音」「温度」「振動」などの波形に変化が生じるという性質を利用して監視を行います。通常とは異なる周波数の音が周期的に出ていれば、軸受けが摩耗しているのかもしれませんし、温度が急速に上がるようなら潤滑系や冷却系の故障を疑わなければなりません。

ポイントとなるのは、「どのような状況を"異常"とするか」の判定方法です。動作の有無を確かめるだけなら信号がスレッショルド(限界値、しきい値)から逸脱しているかどうかを判定するだけで済みます。ただ、動作音や振動の波形に埋もれたごく小さな変動を見つけ出すには、高速フーリエ変換(FFT)などの高度な解析手法を使う必要があるでしょう。

また、最近では人工知能(AI)の手法も異常判定に使われ始めました。FFTなどの伝統的な解析手法とAI手法が大きく異なるのは、スレッショルドをあらかじめ指定する必要がないこと。平常時と異常時の波形を学習用のデータとして与えたり、AIに自ら試行させたりすれば、最適なスレッショルドをAIが自動的に決めてくれます。

振動センサで故障を早期発見するシステム

例えば、IMVとNTTテクノクロスが共同開発した「ラムダバイブロ分析システム」では、工場内の設備機器に取り付けた複数の振動センサからの信号をIoT診断ユニット「Λ-Vibro(ラムダバイブロ)」に集約。Λ-Vibroの内部でデジタルデータに変換してからインターネットに送り出し、解析用サーバに組み込んだビジネスインテリジェンス(BI)ツール「Yellowfin」がそのデータを解析・可視化する仕組みになっています(図)。機械の振動を計測することで、見た目では分からない機械の消耗や劣化を検知できるのが特徴です。

1台のΛ-Vibroにつなぎ込めるセンサは8個までですが、複数のΛ-Vibroをインターネットに接続すれば、工場全体のスマートファクトリー化も可能になります。

    ラムダバイブロ分析システムの導入効果として期待できるのは、次の3点が挙げられます。
  • 故障個所の早期発見
  • 故障個所の早期発見
  • PC画面での遠隔統合監視

さらに、AIとIoTを活用した故障の予兆検知も進んでいます。ラムダバイブロ分析システムと、オープンソースの大規模分散リアルタイム機械学習基盤「Jubatus(ユバタス)」を使用したAIエンジンの組み合わせで、故障の予兆検知に取り組む実証実験が行われています。

たった1台の製造装置の故障が工場全体の操業停止に拡大するのを防ぐためにも、ラムダバイブロ分析システムの稼働状況監視機能は大きな役割を果たします。

「ラムダバイブロ分析システム」の仕組み

生産設備に取り付けた振動センサからの信号を集約・デジタル化してインターネットに送り出し、BIツールで解析・可視化する。

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