熱中症の予防方法 ~ 3つの基本対策と実践ツール ~
近年、熱中症のリスクが深刻化する中で企業の熱中症対策が義務化されました。本コラムでは企業で必要な熱中症の予防・対策について解説します。
■はじめに
熱中症は正しい知識と日常的な予防行動によって確実にリスクを減らすことができる疾患です。最近では日本の夏は高温多湿が続き、年々そのリスクが高まっています。
前回記事(「熱中症の基本情報 ~ 統計データと早期発見のポイント ~」)では、熱中症の基本的な情報、症状と早期発見のポイントについて解説しました。
本記事では、厚生労働省や環境省のガイドラインをもとに、予防の「3つの基本方針」と「職場での実践的対応」、「IoTを活用した熱中症予防の新たなアプローチ」を、一般生活と労働安全の両面から具体的に解説します。ご自身やご家族、職場の仲間を守るために、今日から実践できる対策を身につけましょう。
■目次
- 熱中症予防の3つの基本対策
- 職場での実践的対応の3つの観点
- IoTを活用した熱中症予防の新たなアプローチ
- まとめ
■熱中症予防の3つの基本対策
熱中症予防の基本対策は、暑熱環境を避けて長時間滞在しないこと、水分・塩分をこまめに補給すること、そして体調管理を徹底することです(※1)。
これら3つの基本対策を順に詳しく見ていきましょう。
暑さを避ける
熱中症予防の第一歩は「暑さから身を守る」ことです。
屋内ではエアコンなどで室温を28℃程度まで下げ、扇風機やサーキュレーターを併用して空気を循環させましょう。湿度も40~60%に保つと体感温度が下がります。
屋外では直射日光をできるだけ避け、日陰やクールスポット(商標施設、図書館など)を活用しましょう。外出や運動は暑さのピークタイム(10~16時)を避けることが有効です。
服装は通気性・吸汗性のある素材で明るい色を選び、帽子や日傘も使いましょう。
WBGT(暑さ指数)の情報を活用し、28℃以上なら警戒、31℃以上なら運用・重作業を控える判断も大切です(※2)。
・図2-1「暑さを避ける」
水分・塩分の補給
水分・塩分補給は熱中症予防の要です。のどが渇く前に1時間当たりコップ1杯(約200ml)を目安にこまめに水を飲みましょう。大量に汗をかいた時はスポーツドリンクや経口補水液など、ナトリウム40~80mg/100ml程度を含む飲料で塩分も補給します。
作業や運動の前後、または活動中は15~20分ごとに100~200mlずつ水分補給するのが理想的です。ただし、アルコールやカフェイン飲料には利尿作用があり、脱水を招きやすいので注意しましょう。尿の色が濃い場合は脱水気味のサインです。
高血圧や腎疾患のある方は塩分摂取については医師に相談してからにしてください。
・図2-2「水分・塩分補給」
体調管理の徹底
日頃の体調管理は熱中症リスクを大きく左右します。十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動を心がけましょう。
体調がすぐれない時、寝不足、発熱、下痢、二日酔いなどの場合は無理せず休むようにしましょう。
高齢者や基礎疾患のある方、服薬中の方は特に注意し、家族や職場と体調の変化を共有することも大切です。
気温が上がり始めた時期から、毎日30分程度の軽い運動や作業、入浴で徐々に気温に体を慣らすことで発汗までの時間が短くなり熱中症予防につながります。このような準備を暑熱順化(体を熱に慣らすこと)と呼びます。暑熱順化には個人差がありますが、数日から2週間程度かかります(※3)。
・図2-3「体調管理の徹底」
■職場での実践的対応の3つの観点
職場における熱中症対策は令和7年6月から労働安全衛生規則第617条により義務化されました。
WBGT値が一定以上など条件を満たす環境で作業を行う事業者は、熱中症対策の「体制整備」「手順作成」「関係者への周知」が義務付けられています(※4)。
具体的にはどのようなことをすればよいか、義務化に合わせた実践的対応の観点について学び、適切に対応できるように準備しましょう。
作業環境管理
労働安全衛生規則により、事業者にはWBGT値の定期観測(半月に1回以上、夏期はより高頻度)と記録保存が推奨されています。
さらに、WBGT値に応じた環境改善として、通風・冷蔵設備の設置、遮熱対策、冷房完備の休憩場所の確保が求められています。
・図2-4-1「作業環境管理1」
・図2-4-2「作業環境管理2」
また、作業場所の近くには飲料水、塩分補給用の食品、身体冷却用品の常備も必要です。
・図2-4-3「作業環境管理3」
もちろん、これらの作業環境について作業者にも周知し、熱中症の重篤化を予防できるように手順も準備しましょう。
作業管理
WBGT値が基準値を超過する場合には「作業中止・時間短縮・休憩延長」が推奨されています。
休憩時間を確保するための作業ローテーションや、バディ制によって単独作業を避けて熱中症の予兆の早期発見に繋げることも有効な管理手法です。
・図2-5-1「作業管理1」
入職したての人や長期休暇明けの人は暑さに慣れておらず熱中症のリスクが高まります。こうした人に対しては、暑熱順化期間として1週間程度をかけて段階的に作業負荷を増加させるなどの計画的な作業管理が推奨されています。
・図2-5-2「作業管理2」
・図2-5-3「作業管理3」
作業時の服装についても熱気がこもりにくい材質で通気性・透湿性がよく、冷却機能のあるものが望ましいでしょう。
・図2-5-4「作業管理4」
さらに、熱中症の恐れがある人を発見した場合の緊急時の手順も作成し、万が一に備えることも必要となります。
緊急時の対応については次回のブログ記事で詳しくお伝えします。
健康管理
労働者への熱中症に関する労働衛生教育の実施、健康診断の結果に基づく対応、日々の健康状態の確認といった項目が健康管理として求められています。
・図2-6-1「健康管理1」
作業前の健康状態の確認と高リスク者(高齢者・基礎疾患・暑熱順化前の作業者)への配慮、体調不良時の作業中止判断も重要な管理要素です。
・図2-6-2「健康管理2」
日々の健康管理を通した記録・分析により、職場全体で労働者の健康を継続的に改善していくことが必要になります。
■IoTを活用した熱中初予防の新たなアプローチ
従来の熱中症対策は個人の感覚や経験に依存していましたが、近年はIoTの進歩により、現場でも革新的な対策が可能になっています。
こうした新しいアプローチではウェアラブルセンサーや環境センサーを活用し、リアルタイムで「見えない情報」を可視化、対策につなげています。
バイタルデータのモニタリング
ウェアラブルセンサーにより心拍数や体温を常時測定し、身体への熱や作業の負荷レベルを数値化します。個人差や体調変化を客観的に把握できるため、本人が自覚する前に熱中症の初期症状を検知可能です。
環境データとの統合・分析
現場の暑さ指数(WBGT値)、気温、湿度といった環境データと個人のバイタルデータを組み合わせることで、「いつ・どこで・誰が」リスクがあるのか、よりきめ細かく分析、予防することができます。
これらのデータに基づき、熱中症の発症前に作業者本人、現場の管理者の双方に危険を通知したり、作業中に適切なタイミングでの休息、水分補給を促すことができます。熱中症対策の義務化が始まり、データを活用した体調管理の導入が進んでいます。
■まとめ
熱中症予防は科学的根拠に基づく個人の対策と、組織的管理の両立によって実現されます。
日常生活では「暑さを避ける」「水分・塩分補給」「体調管理」を、職場では労働安全衛生規則に則り「作業環境管理」「作業管理」「健康管理」を徹底することで、効果的な予防が可能です。
NTTテクノクロスでは職場の体制整備を支援し、健康管理を促進するソリューションを提供しています。
アウターウェアの下にhitoe®ベルトを着用することで、より利用者に近い衣服内の温湿度を計測することができます。 計測された情報はわかりやすく可視化され、作業者自身がスマートフォンで確認できると同時に、管理者は複数の作業者の体調を一括して監視することが可能です。また、体調不良のリスクが高まった場合には、作業者および管理者にアプリから通知が届き、個別に休憩や療養などの対策を行うことが可能になります。
熱中症対策の義務化に備えるため、弊社のサービスもぜひご検討ください。
次回は熱中症の緊急時対応についてです。熱中症の発見時にも適切に対応できるようにしていきましょう。
参考リンク
※図2-1、2-2、2-3 熱中症 環境保健マニュアル2022
https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_full.pdf
※1 職場における熱中症予防基本対策要綱
https://neccyusho.mhlw.go.jp/pdf/2025/r7_neccyusho_prevention.pdf
※2 全国の暑さ指数(WBGT)
https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt_data.php
※3 職場における熱中症予防基本対策のススメ
https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/001485695.pdf
※4 職場における熱中症対策の強化について
https://wbgt.metro.tokyo.lg.jp/assets/docs/250519_Workplace_Measures_Against_Heatstroke.pdf
※図2-4-1,2,3、図2-5-1,2,3,4、図2-6-2 働く人の今すぐ使える熱中症ガイド
https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/001521140.pdf
※図2-6-1 職場における熱中症予防基本対策のススメ
https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/001485695.pdf
■関連サービス
hitoe®暑さ対策サービス for Cloud
ウェアラブルセンサーhitoe®で取得した生体・環境・運動情報をもとに、暑熱環境下における作業者の体調をリアルタイムで把握し、体調不良に関するリスク管理を実現します。
https://www.ntt-tx.co.jp/products/lifesupport_solution/
デジタルサイネージ ひかりサイネージ
日々の伝達事項や注意喚起をタイムリーに繰り返し配信できるサービス。
そのときどきの情報を発信し、現場の作業を適切に安全に進めるための補助ツールとなります。
https://www.ntt-tx.co.jp/products/hikarisignage/
* 記載されている商品名・会社名などの固有名詞は一般に該当する会社もしくは組織の商標または登録商標です。

ライフサポートソリューション担当です。導電繊維素材hitoeを用いた生体センサーによるサービスや、生体センサーに関連するトピックについてご紹介いたします。














