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プライベートクラウドの作り方[後編]

企業が自社内でクラウドコンピューティングのシステムを構築して利用部門にサービス提供する「プライベートクラウド」。NTTソフトウェア自身の体験談を交え、初期段階での検討ポイントを紹介します。

ハードウェア選定のポイント

プライベートクラウド構築に適したサーバやストレージとして各社から複数の商品が発売されています。さまざまな評価観点が存在しますが、弊社では以下のような点を重視しました。

仮想化に向いているサーバとは?

サーバ選定においては、CPUのコア数、スロット数、メモリ容量によって物理サーバあたりの稼働可能な仮想マシンの最大数と仮想化ソフトウェアのライセンスコストが左右されるという特徴があります。

「仮想マシン一台を稼働させるためのコストを最小化する」ため最も考慮すべきはメモリです。メモリは仮想化による共有の効果が限定的なため、多くの場合に最初にネックになるリソースです。最もコストパフォーマンスよくメモリを確保するためにはメモリスロットの多いマシンが有利です。


仮想化ソフトによって異なるのですがRed Hat Enterprise Virtualization はコア数に関係なくCPUのスロット数で課金されます。そのため1CPUあたりのコア数が最大になるようにCPUを選定しました。

スモールスタート出来るストレージを選ぶ

初期投資を十分に得られない場合は、ほとんどのコストを共有ストレージが占めてしまうかもしれません。プライベートクラウドは、スモールスタートして利用率に応じて物理環境を適切にスケールしていくというのが理想的です。ストレージもそれに追随できるような製品を選択する必要があります。

ここまで、プライベートクラウド構築時のためのハードウェア・ソフトウェア選定におけるポイントについて紹介してきましたが、次は構築後のスムーズな運用のために重要なポイントを紹介します。

ネットワーク管理の自動化

プライベートクラウドを導入する際に、是非考慮していただきたいのがネットワーク管理の自動化です。仮想化をお使 いの方はお分かりかと思いますが、仮想マシンのIPアドレス管理は骨の折れる仕事です。初期の段階で自動化を検討しておけば、規模が大きくなった際も管理 コストが増大する心配がなくなります。

■ IPアドレス管理を自動化する
どの仮想マシンがどのIPアドレスを使用しているか、また過去の状況はどうだったかをきちんと管理し、新規仮想マシンの申請に対して空いているIPアドレスを付与する仕組みが必要です。

■ サービス単位にVLANを割り当てる
仮想化環境においてサービス単位に独立したネットワークを構築する場合、VLANを用いるのが一般 的ですが、VLANに接続できる仮想マシン、その利用者、外部ネットワークとの接続ポリシー、利用期間等の管理を行う必要があり、ユーザ主導で動的に仮想 マシンを作成するクラウドにおいては自動化が必須な業務です。

■ LINUXを活用したルータで実現する

弊社では、仮想マシンの利用者、サービスグループ、VLAN、MACアドレス、IPアドレス、利用期間をデータベース管理し、申請受理後にDHCP等のルールを変更するWebサービスをLinuxの標準的な機能をベースに実装し、この問題に対処しました。

管理コスト削減の要"ポータル"

プライベートクラウドの利便性を向上し、サービス管理を複数主体で分担するために、欠かせない機能が“ポータル”です。

ポータルとは

前編でAmazon EC2について述べましたが、Amazon EC2ではウェブサイトから仮想マシンのサーバの作成・削除・起動・停止等をコントロールできます。プライベートクラウドでもこの機能を実装することによって、複数の主体で社内IT基盤を共有し、各々の主体ができることは自分でやるという体制を作ることができます。サービス管理を交えるポータルの出来不出来がプライベートクラウドの利用率、IT部門の負担軽減を大きく左右します。

ポータルに求められる機能

ポータルの基本的な機能として以下が求められます。

  • 仮想マシンの制御(作成・削除・起動・停止)
  • ユーザ管理(認証・認可)
  • リソース管理(スケジューリング、履歴蓄積)

Amazon EC2のような世界規模のIaaSと特に異なるのは、リソース管理です。プライベートクラウドは規模がEC2等に比べて小さいため、よりセンシティブなリソース管理が求められます。サービスの品質を保証するためには、すべての申請を受理するのではなく、リソースの上限を把握しスケジューリングをきちんと行う必要があります。


また、ポータルの応用的な機能として以下が求められます。

  • 仮想マシンのグループ管理
  • ユーザによるテンプレート作成
  • アプリケーションの自動インストール
  • ライセンス管理
  • パブリッククラウド連携


ここでは詳細な解説は省略しますが、利用者の利便性を向上させ、ビジネスにITをよりよく活用してもらうために、ポータルの果たす役割は今後も増えると思われます。また、場合によっては、そのビジネスドメインに応じたカスタマイズを施す必要もあるでしょう。

弊社プライベートクラウドポータル「vHut」とは

弊社では、社内のプライベートクラウドを構築するにあたって、ポータル(開発コードネーム:vHut)を自作しました。vHutは、Red Hat Enterprise Virtualization と連携してプライベートクラウドを運用するためのWebサーバで以下の機能が実装されています。

  • 仮想マシンの制御(作成・削除・起動・停止)
  • ユーザ管理(認証・認可)
  • リソース管理(スケジューリング、履歴蓄積)
  • 仮想マシンのグループ管理
  • ユーザによるテンプレート作成

プライベートクラウドの利点:コスト削減とサービス向上の両立

< 図2.vHut のメイン画面 >

まとめ

NTTソフトウェア株式会社:瀧口 浩義

プライベートクラウドとは何かというところから始まって、初期検討の材料になるようなポイントを簡単に述べさせていただきましたが、イメージはつかめたでしょうか?


今後弊社のプライベートクラウドの稼働状況や、コスト効果についてレポートしていきたいと考えております。また、プライベートクラウドに関するご相談、デモ等についてもお受けいたしております。下記ご連絡先までお気軽にお問い合わせください。

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瀧口 浩義
瀧口 浩義

NTTソフトウェア株式会社