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OpenStack Summit Sydney 参加レポート (3日目)

今回で16回目となるOpenStack Summitですが、オーストラリアでは初開催。南半球ではこれから夏本番という気候です。現地の暑さに負けないホットなレポートを3日連続でお届けしていきますので、最後までよろしくお願いします!

はじめに

こんにちは。OpenStack Summit Sydneyもいよいよ本日で最終日です。
本日も注目セッションやブース展示などについてホットな情報をお届け致します!

今日の注目セッション

How to Make OpenStack Heat Better based on Our One Year Production Journey

日本のNTTコミュニケーションズから、ECL2.0にHeatによるテンプレート自動生成機能を
追加する取り組みに関する発表がありました。
冒頭ではHeat自体の機能説明が行なわれ、中盤では彼らがHeatをプロダクション環境に
導入する際に実施したストーリが語られました。
 ・Heatへの独自リソース管理用プラグインの追加
 ・詳細なValidation機能の追加
どちらも非常に分かりやすく語られており、上記のようなテーマに関心のある人に
おすすめのセッションとなっています。
後半では「GUIによるHeatテンプレートの作成」を実現するために彼らが開発した
Heat-Dashboadの説明が行なわれました。
Heatのテンプレート (=VM、ネットワークなどの構成を定義するファイル) はYAML形式で
記述する仕様となっているため、非エンジニアには少しとっつきにくいという問題があります。
その問題を解決するため、彼らはOpenStackのダッシュボード上 (horizon) でアイコンを
ドラッグ&ドロップすることでHeatテンプレートを作成する機能を開発し、ECL2.0上に実装しています。

上記の機能はHeat-DashboardとしてOpenStackプロジェクトに公開済みであり、
聴衆に積極的なフィードバックを依頼してセッションが結ばれました。
聴衆もHeat-Dashboardに強い興味を持ったようで、対応機能の確認やリクエストを
続々と伝えていた様子が印象的でした。

個人的にもHeat-Dashboardは「複雑な環境構成をグラフィカルに確認しながら
定義していくことができる」点でユーザに対して大きな価値を提供できるコンポーネントだと感じており、
更なる機能開発を期待しています。

 ・足りない機能がある場合は自身で機能追加する
 ・機能追加したコードをコミュニティに還元する
というOSSならではの改善サイクルを回す教科書的な事例として、OSSの開発者は
チェックしておくべきセッションだと思います。

フォーラムについて

開発者や利用者など、立場の異なる参加者が機能について対等に話し合える場として
提供されるフォーラムが今回のSummitでも多く開催されていました。

その中で参加した2つのフォーラムについて少し内容に触れたいと思います。

「ETSI NFV Specs' Requirements vs OpenStack Reality forum」の議題について

このフォーラムではETSI NFV仕様とOpenStack API-sの間でETSI NFVによって
識別されるギャップが存在し、これらのギャップをどのように解決し、
どのOpenStackプロジェクトによって解決または影響を受けるかを議論していました。
例えば、「OpenStackにリソース予約機能がない」というギャップに対する議論です。
Blazarというリソース予約機能を具備する公式プロジェクトがあるが、今後サポートする
リソース種別が明確になっていない。
そのギャップを埋めるための合意(すり合わせ)を行っていく必要がある、といった内容の議論がありました。
※議論内容は以下にまとまっています。
https://etherpad.openstack.org/p/ptg-denver-etsi-nfv-tst003-gaps-explained

「NFV meets cloud, virtio, sr-iov, dpdk, cpu pinning, ...」の議題について

このフォーラムではクラウドコンピューティングのテレコムユースケースでは
ベアメタル専用のハードウェア環境で要件を満たしていたが仮想化された
クラウドコンピューティングモデルに適合が難しい。
そのため、以下の技術について議論されていました。
 ・virtio
 ・dpdk
 ・sr-iov
 ・cpuピニング
 ・NUMA

例えば、sr-iovについてVNFベンダーが考えるパフォーマンス確保のための
アプローチ最適解とこれを実現するために環境に適用する際の柔軟性とはトレードオフの関係にある。
各技術をベンダー仕様を考慮しながらどのように環境に合わせてカスタマイズしていくか
といったところが今後の課題だと感じました。

※議論内容は以下にまとまっています。
https://etherpad.openstack.org/p/nfv-meets-cloud-forum-sydney

NFV関連コンポーネントについて

Tacker Project Updates

OpenStack Tackerは仮想ネットワーク機能(VNF)の展開と
操作に使用されるOpenStackベースのNFVオーケストレーションフレームワークです。
これはETSI NFVアーキテクチャフレームワークと互換性があり、
VNFを管理する機能スタックを提供します。

注目を浴び始めていることもあり、今回のSummitでは以下のTackerセッションが開催されました。
 ・OpenStack Collaboration Made in Heaven with Mistral, Neutron, Tacker and more
 ・OpenStack Tacker - 102 - Hands-on lab
 ・Tacker - Project Update

Queensでのポイントとしては、以下が挙げられます。
 ・OpenStack Kubernetes VIM、コンテナVIMが対応
 ・VNFFGの強化
今後は他のVIMへの対応なども検討しているようです。
通信事業者向けのNFVセッションが多く見られたので、
今後Tackerの担う機能がとても重要になってくると感じました。

その他、NFV関連のコンポーネントとしてVitrageについてもお聞きしてきました。
ワークフローサービスを提供するMistralとの連携により分析と是正処置を行うことが可能となります。
例えば、故障したレイヤ(NWスイッチなのかコンピュートノードなのか)によって
対応テンプレートを定義しておけばVNFへの疎通断の根本原因を分析して、
不用意なVNFオートヒーリングの発生を抑止できるなど適切に対応が出来るようになることが期待されます。

Market Place(Dynatrace社)の展示について

OpenStackに限らず、システムを運用する際には監視が必要になります。
監視を実現するためのソフトウェアは多数ありますが、
監視システムの設計・構築・運用で苦労をする事例が依然として存在します。
そのため、外部の監視サービスの利用を検討する企業も多いです。
今回のサミットではDynatraceという監視ソリューション(Application Performance Monitoring solution)
がブースを出展されていたのでお話を伺ってきました。
※Dynatraceは今回が初出展というわけではございません。

デモも見せていただき、わかったことは大きく6個あります。
 1.エージェントをインストールだけで簡単に監視が始まる。
 2.Webブラウザの開発者ツールのように、サービスのレスポンスタイムの詳細を確認できる。
 3.プロセスの監視も可能。
 4.ログの検索やダウンロードが可能。
 5.サービスの構成図を描画し、障害の影響範囲を時間経過で描画できる。
 6.AIを利用して、障害の根本原因の推測ができる。
4から6が特徴的で、監視(何かをトリガーとしてアラートを上げる)するだけではなく、
障害解析までカバー範囲が及んでいます。
弊社のOpenStackベースのクラウドを運用する際にどれだけ効果があるか、
是非検証してみたいです。

おわりに

3日間に渡ってOpenStack Summitのレポートをお届けしました。

このブログをきっかけにOpenStackの動向に興味を持っていただけたら幸いです。
弊社は今後もOpenStackの最新動向を追って参りますので、
OpenStackに関して何かお悩みがございましたら気軽にご相談ください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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著者プロフィール
渥美 慶彦
渥美 慶彦