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Salesforce MVP 鈴木貞弘の「Agentforce 匠指南」シリーズ 第4回: Salesforceの匠が明かすAgentforceのベストプラクティスと課題克服

本記事では、長年のSalesforceエコシステムでの経験と、最新のAI技術への取り組みを通じ、新しいブログシリーズ「Agentforce 匠指南」を始めます。全5回にわたり、Salesforceの未来を担うキーテクノロジーであるAgentforceについて、基礎から応用、そして展望までを、私の「匠の視点」で徹底的に紐解いていきます。

1. はじめに:実装後の「本稼働」こそが真価を発揮する

3では、匠の視点からAgentforceをノーコードで実装するステップを解説し、皆さんが実際に顧客サポートエージェントを構築できるようにお手伝いしました。

実装を終えたら、次は「どう運用し、どう活用するか」が鍵となります。私の経験から、AIエージェントの価値は構築時ではなく、本稼働後の最適化で決まるということです。

今回は、第3回の続きとして、Agentforceを本格稼働させるためのベストプラクティスに焦点を当てます。20259月現在Agentforce 3では、パフォーマンスチューニングやデバッグツールが大幅に強化され、Summer '25のアップデートでCommand Centerが正式リリース(GA)され、運用管理の在り方が大きく変化しました。
パフォーマンス改善、デバッグ手法、ユースケースの広がりを、私のエバンジェリスト経験に基づくTEAMSモデル適用も交えて解説します。読み終えたら、Agentforceをビジネスの「デジタル労働力」として最大化するイメージが掴めるはずです。

2. パフォーマンスチューニング:Agentforceの速度と効率を極めるテクニック

Agentforceの本稼働では、応答速度がユーザー体験と生産性を左右します。第3回でフローを使ったように、Apexを使わない場合でも、以下のテクニックでパフォーマンスを最適化できます。

2.1. フローの最適化

フローは便利ですが、設計が非効率だと応答速度に悪影響を及ぼします。

 ・レコードの取得(Get Records: 可能な限り条件を絞り込み、不要なフィールドを取得しないようにしましょう。

 ・ループ処理: 大量のデータに対するループ処理は避けるべきです。代わりに、一括処理(Bulkification)を意識したフロー設計を心がけましょう。

 ・自動レイアウトの使用: フローの可読性を高めることで、将来的なデバッグや修正が容易になります。

2.2. Command Centerによるリアルタイム監視と改善

Agentforce 3で導入されたCommand Centerは、エージェントのパフォーマンスを可視化し、ボトルネックを特定するのに役立ちます。

 ・応答時間の監視: エージェントの平均応答時間を監視し、遅延が発生しているトピックやアクションを特定します。

 ・エラーログの分析: 失敗したアクションのログを詳細に分析し、フローの不具合やデータの問題を特定します。

3.  デバッグとトラブルシューティング:本稼働での課題を克服する

本稼働後、予期せぬトラブルはつきものです。しかし、正しいツールと手順を知っていれば、迅速に解決できます。

3.1. Command Centerによる根本原因分析

Command Centerは、エージェントの実行プロセスを可視化し、問題の根本原因を特定するための強力なツールです。

 ・実行トレース: ユーザーの発話から最終的なアクションまでのプロセスを追跡し、どのステップでエラーが発生したかを特定します。

 ・メトリクス分析: 応答時間や成功率などのメトリクスを監視することで、問題のパターンを自動検知します。

3.2. トラブルシューティングの具体例:よくある課題と解決法

 ・レイテンシー問題: フロー内の非効率な処理が原因。Command Centerのログからボトルネックとなっている要素を特定し、最適化されたフローに修正しましょう。

 ・データ取得エラー: フローの「レコードの取得」要素で、指定した条件に合うレコードが見つからない場合。ユーザーの入力が正しいか、データが存在するかを確認するフローロジックを追加しましょう。

 ・権限不足: エージェントが実行するフローが、必要なオブジェクトやフィールドへのアクセス権を持っていない場合。Agentforceユーザー権限セットを再確認し、必要に応じて権限を追加します。

4. ユースケースの広がり:部門横断的な活用とTEAMSモデル適用

顧客サポートを超え、Agentforceは営業・マーケティング・内部業務で活躍します。私の経験から、TEAMSモデルTask(業務定義)⇒ Execute(実行)⇒ Adapt(改善)⇒ Measure(効果測定)⇒ Scale(拡張)という流れで段階的に進める)をAgentforceに適用し、業務プロセスが改善した事例を紹介します。

ユースケース1)営業部門:リード生成とフォロー自動化

Agentforceで、見込み客の問い合わせを自動リード化、Einstein予測と連携して優先順位付け。Summer '25Agentforceアップデートによる、リード獲得から商談成立までの営業プロセス全体の管理と滞りなく進めるパイプライン推進の効率化。週次レビューでリード変換率を測定し、TEAMSExecute / Measureで調整した結果、営業効率が向上。

ユースケース2) マーケティング部門:キャンペーン最適化

トピックで顧客セグメント分析、フローでパーソナライズドコンテンツを生成。Data Cloud統合でリアルタイムインサイトを提供。TEAMS適用:Adapt(フィードバック学習)でキャンペーン結果を分析し、次のアクションに反映。

5. 次回予告:匠が展望するAgentforceの未来と拡張戦略

4回では、本稼働後の運用と活用に焦点を当て、ノーコードでのアプローチでも適用できるベストプラクティスを解説しました。これで、皆さんもAgentforceをより深く理解し、ビジネスに活かせるはずです。

次回、最終回となる第5回は「匠が展望するAgentforceの未来と拡張戦略」と題し、Agentforceが今後どのように進化していくか、私の想像とSalesforceのロードマップに基づきながら解説します。カスタム拡張の可能性や、企業としてどのように戦略を立てるべきかについてもお話しします。どうぞお楽しみに!

連載シリーズ
Agentforce匠指南
著者プロフィール
鈴木 貞弘
鈴木 貞弘
2000年にNTTテクノクロスの前身であるNTTソフトウェアに入社。Service Cloudでのコンタクトセンター構築案件に数多く従事。Salesforceエバンジェリストとして2017年に日本人初の非開発者系MVP、Golden Hoodie Awardを受賞。2023年にはSalesforce MVPの殿堂入り。日本で初開催となるAgentforce Community Tourを主催するなど業界の先駆者(Trailblazer)として活躍中。