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カーボンニュートラルとIOWN 第1回~NTTの環境目標の実現への取り組み~

今回はカーボンニュートラルとは?なぜ対策が必要か?NTTはどんな目標をたて, カーボンニュートラル実現に寄与していくのかを紹介いたします。

はじめに

こんにちは, NTTテクノクロス株式会社の村木と申します。
近年随所でよく耳にするカーボンニュートラル(carbon neutrality)という言葉があります。
本ブログではカーボンニュートラルとはどういったことを目指す言葉なのか,
また, カーボンニュートラル実現に向けてNTTがどういった取組みを実施しているか,
取組みの要素であるIOWNとはなにか, についてご紹介したいと思います。

なぜカーボンニュートラルを目指す必要があるのか

まずはカーボンニュートラルを目指すに至る背景をとして, 地球温暖化と温室効果ガスの関係について簡単にまとめたいと思います。

○世界の平均気温の上昇
 世界の平均気温は2020年時点で, 工業化以前(1850~1900年)と比べ既に約1.1℃上昇しています。
 また, このままの状況が続けば更に気温は上昇し続けることが予測されています。
 以下が気象庁が公開している日本の年平均気温偏差の図です。
 年々増加傾向にあることがわかります。

(出典:気象庁HP)

○日本における気温上昇の影響
 日本においては気温上昇によって, 以下のように水資源や農業, 生物, 健康への影響が確認されています。
 かなり身近なところに気温上昇の影響が及んでいることがわかると思います。

  • 分野 影響
    水資源・水災害分野

    ・気候変動による無降水日数の増加と渇水

    ・植物プランクトン増加による水質悪化

    ・洪水の増加, 高波/高潮の増加など

    農業・水産業・生物季節

    ・気温上昇による水稲品質の低下

    ・海面水温上昇による特定品種の漁獲量の低下

    ・農業昆虫の分布の変化

    ・桜の開花時期が早まり紅葉が遅くなるなど

    健康

    ・デング熱など感染症を媒介する蚊の分布の拡大

    ・気温上昇による熱中症の増加など

※参考
 日本の気候変動と影響については文部科学省・気象庁・環境省の以下のレポートが参考になります。

○気温上昇の要因(温室効果ガス)
 以下より, 温室効果ガス濃度の上昇と世界平均気温の上昇は関係する可能性が高いと考えられております。

  • ・産業革命前に約280ppmであった二酸化炭素濃度は2011年現在において390.9ppmと40%も増加, 加えて近年は1年あたり2ppm濃度増加率も大きくなってきている
    • ・ppm:100万分のいくらであるかという割合を示すparts-per表記による単位, 主に濃度を表す際に用いられる
  • ・IPCC AR4は「20世紀半ば以降に観測された世界平均気温の上昇のほとんどは, 人為起源の温室効果ガス濃度の観測された増加によってもたらされた可能性が非常に高い」ことを明らかにした
    • ・IPCC AR4:国連下部組織の気候変動に関する政府間パネルによって発行された, 地球温暖化に関する報告書

そもそもカーボンニュートラルとは?

カーボンニュートラル実現に向けた世界的な目標である「パリ協定」と, 日本における目標である「2050年カーボンニュートラル宣言」を通して, そもそもカーボンニュートラルとはどういった言葉なのかについてご紹介いたします。

○パリ協定
 パリ協定という, 2020年から運用開始した国際的な枠組みが存在します。
 パリ協定は, 平均気温上昇について産業革命以前と比べて以下の3つを実現することを目標としています。

  • ・「2℃より十分低く保つ」
  • ・「1.5℃に抑える努力を追求」(努力目標)
  • ・「早期に温室効果ガス排量をピークアウト」+「今世紀後半のカーボンニュートラルの実現」

 パリ協定のポイントは以下と言われています。

  • ・前身の京都議定書と異なり, 途上国を含む全ての参加国に排出削減努力を求めること
  • ・先進国にトップダウンの目標を課した京都議定書と異なり, 各締約国が目標を制定/進捗報告を行い専門家のレビュを受けるボトムアップ型の枠組みを採用したこと

 また, パリ協定においてカーボンニュートラルを目指す国は124カ国と1地域(EU)(2021年1月20日時点)にのぼります。

  • ・世界全体のCO2排出量の37.7%を占める
  • ・2060年までのカーボンニュートラル実現を表明した中国も含めると世界全体のCO2排出量の2/3を占める

○日本の「2050年カーボンニュートラル宣言」
 菅元総理が2020年10月の臨時国会で以下の通り「2050年カーボンニュートラル宣言」を行いました。

  • ・「2050年カーボンニュートラル宣言」:「我が国は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします」
  • ・温室効果ガスは「二酸化炭素」「メタン」「一酸化二窒素」「フロンガス」を指す
  • (出典:経済産業省)
  • ・「全体としてゼロにする」は「排出量から吸収量と除去量を差し引いた合計をゼロにする」ことを意味する

(出典:経済産業省)

※参考
 日本の「2050年カーボンニュートラル宣言」については以下の経済産業省資源エネルギー庁のページが参考になります。

 また, 「2050年カーボンニュートラル宣言」を受けて, 成長が期待される分野・産業ごとに「経済と環境の好循環」作っていく産業政策として「グリーン成長戦略」が掲げられております。
 NTTを含むIT業界は半導体・情報通信産業として戦略がまとめられており, アプローチとして「グリーン by デジタル」「グリーン of デジタル」の2つについて言及されております。

  • ・グリーン by デジタル
     デジタル化によるエネルギー需要の効率化・省CO2化の促進
  • ・グリーン of デジタル
     デジタル機器・情報通信産業自身の省エネ・グリーン化

 この2つはIT業界の今後のキーワードとなってくるかもしれません。
 NTT/IOWNの取組みでもこれら2つのアプローチに関連するものが中核を担っています。
 今後, 本ブログでも深掘りしていく予定です。
 各分野・産業ごとのグリーン成長戦略については以下の資料が参考になります。

  • ・2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略(資料1, 資料2

NTTの環境目標とIOWN

続いてNTTグループの環境目標とその実現に向けた3つの方策を紹介いたします。

○NTTの環境目標
 NTTの環境目標「NTT Green Innovation toward 2040-環境負荷ゼロと経済成長の同時実現-」をご紹介いたします。

(出典:NTT)

○NTTの環境目標の背景
 本目標の背景には通信量の増加に伴う消費電力増大があります。
 概要は以下のとおりです。

  • ・社会基盤を支えるデジタル環境が進展することで, 情報量が拡大しネットワーク負荷を高めるだけでなくエネルギー消費も増大させる
  • ・2006年度比で2025年までに情報通信量は190倍に, IT機器の電力消費量も5倍になる
  • ・2050年には電力消費量は12倍になる推計

(出典:経済産業省)

○NTTの環境目標の概要
 NTTは3つの方策によって40年度脱炭素実現を目指していきます。
 目標の概要は以下のとおりです。

  • ・政府が目標とする2050年までの目標を10年前倒しでNTTグループ全体で脱炭素を実現する
  • ・IOWNと再生可能エネルギーの導入が鍵
  • ・「環境負荷ゼロと経済成長、相反する目的の同時実現を目指したい」

○NTTの環境目標達成のための3つの方策
 目標達成に向けた3つの方策は以下のとおりです。

  • 方策 概要
    省エネ

    継続的な省エネで温室効果ガスを10%削減

    再生可能エネルギー

    再生可能エネルギーの積極導入によって温室効果ガスを45%削減

    • ・NTTノードエナジーを中心に太陽光発電や洋上風力発電設備を広げる
    • ・「30年度には電力使用量の80%を再生可能エネルギーで賄う。その内半分を自社所有の電源から調達する計画」
    • ・最終的に40年度に20年度比で7倍の再生可能エネルギーを導入し, この時点で再生可能エネルギーによって温暖化ガス排出量を45%削減
    IOWN

    IOWNの省エネルギー技術によって温室効果ガスを45%削減

    • ・電子技術(エレクトロニクス)と比べて省エネルギーという特性を持つ光技術(フォトニクス)等

(出典:NTT)

※参考
 NTTの環境目標とIOWN構想の関連についてはNTTの以下のページが参考になります。

 また, 本項冒頭の図に記載されている経済成長「パラコンシステント」のキーワードについては以下のページ, および書籍が参考になります。
 本ブログでもIOWNとあわせて機会があれば掘り下げていきたいと考えております。

NTTテクノクロスの環境目標と取組み紹介

最後にNTTグループの一社であるNTTテクノクロスの環境目標と取り組みを簡単にご紹介いたします。

○NTTテクノクロスの環境目標
 NTTテクノクロスにおいてもサステナビリティ/カーボンニュートラルの観点で環境目標を制定し, 各種取組みを実施しております。
 「自然(地球)」との共生と題している目標を以下に記載いたします。

  • 目標 概要
    社会が脱炭素化している未来へ

    ・2030年度 温室効果ガス排出量80%削減(2013年度比)

    ・2040年度 カーボンニュートラル

    ・IOWN-NWの実用化とDXの推進でカーボンニュートラルの実現に貢献

    ・エネルギー利用効率化に貢献するグリーンソフトウェアを推進し、創出するサービスや技術は環境に配慮

    資源が循環している未来へ

    ・廃棄物リサイクルの推進

    ・プラスチック利用削減の推進

    人と自然が寄り添う未来へ

    ・生態系を保全するため、地域ボランティア活動等への積極的参画

 NTTテクノクロスはIOWNの実用化に貢献しDXを推進していくことで,
 NTTと目標を同じくして2040年度までのカーボンニュートラルの実現を目指します。

 また, 環境保護の取組みの一部を以下に紹介いたします。

  • ・ICT(情報通信技術:Information and Communications Technology)による環境貢献
    • ICTソリューションの提供による業務効率化や紙利用料の削減
  • ・エコオフィス活動
    • 社内活動として無駄な電気消費の削減, 紙消費量の削減, ごみの分別, グリーン購入法適合品目の購買などを通じた環境に付加をかけない事業活動
  • ・eラーニングによる環境保護研修の実施

 上記のようにNTTテクノクロスでは
 NTTグループとしてのNTT環境目標の推進や社内外への環境貢献を通した活動を実施しております。

 筆者自身も日々の業務で省エネと効率化を実感する機会が増えました。

  • ・近年の納品作業は紙やCD/DVDを用いない電子納品への移行が増えた
  • ・契約書類などの電子処理が増えた
  • ・在宅勤務が増加してフリーアドレス化し人がいないエリアの電気が消されている, などなど

 日々の業務に当たり前に組込まれるほどカーボンニュートラルの波は浸透してきているな, と実感しております。

※参考
 NTTテクノクロスの環境への取組みについては以下のページが参考になります。

おわりに

今回はカーボンニュートラルとは?なぜ対策が必要か?NTTはどんな目標をたて, カーボンニュートラル実現に寄与していくのかを紹介しました。
次回はNTTのカーボンニュートラル施策の一つIOWNとその環境目標への効果を深掘りしていきたいと思います。

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村木 遼亮

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村木 遼亮

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フューチャーネットワーク事業部 第一ビジネスユニット
村木 遼亮(MURAKI RYOUSUKE)