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目の前にある小さな命をいかに守るか~児童相談所と警察の連携を支える情報共有システム開発の軌跡~

児相の真の課題に、長年にわたって現場業務の改善を支援してきたNTTテクノクロスの問題意識と取り組みの現在地を紹介します。


こども家庭庁の2026年1月の発表*1によると、令和6年(2024年)度に全国の児童相談所が対応した児童虐待相談の件数は22万3691件にのぼりました。前年度より0.8%の減少となったものの、相談件数は統計が開始された平成2年度(1990年)以降ほぼ一貫して増加傾向にあり、今後も予断を許さない状況です。

このような状況に児童相談所(児相)では、虐待相談・対応に要する業務負担の増大や専門人材の不足など、職員の疲弊が深刻化しています。負担の一つとなる業務に警察などの関連機関と連携して対応する際に、メールや口頭での連絡内容を別途システムへ入力する作業があります。先のレポートが示すように相談件数の増加により、入力作業には多くの労力がかかっています。

そのため、情報共有にタイムラグが発生するほか、口頭連絡を全て書き取る高い難易度に加えて、聞き間違いによる伝達ミスの恐れもあり、プレッシャーもかかります。こうした課題は、子どもたちの安全確保に影響を及ぼすリスクをはらんでいます。


児相の職員や業務課題に向き合い、いかに子どもを守るか――。NTTテクノクロスの問題意識と取り組みの現在地を紹介します。

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児相の真の課題に、長年にわたって現場業務の改善を支援

児相には虐待や非行に関する通告や相談だけでなく、母子保健や育児、不登校や心身障害など様々な相談が寄せられます。この情報を基に相談員が親子と面談し、適切な助言やサポートを行います。

その通告や相談件数は年々増加傾向にある一方、職員の人的リソースは限られています。主に家庭面談や子どもの支援が児相の本来業務ですが、その前後にも多くの業務があるため、現場の相談員は非常に多忙です。

「専門資格を取得し高い志を持って仕事に就いても、長時間労働の常態化や理想と現実のギャップに悩み、職場を去る人も少なくありません。NTTテクノクロスはこれを社会問題の1つと捉え、長年にわたり児相の業務改善を支援してきました」と語るのは、松田 昌史です。

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【プロフィール】

NTTテクノクロス株式会社

デジタルトランスフォーメーション事業部

第五ビジネスユニット

アシスタントマネージャー 

松田 昌史



松田は大学院で社会心理学を専攻し、児童虐待に関する研究論文も発表しています。NTTテクノクロスは、松田のような専門人材を中心にチームを組成。児相の業務を深く理解することで、マクロ(社会課題)とミクロ(現場課題)の両面によるアプローチで課題解決に貢献しようとしています。

その象徴的な取り組みが江戸川区児童相談所への電話応対支援AIソリューション「ForeSight Voice Mining(FSVM)」の導入です。FSVMはAIによって通話内容をリアルタイムにテキスト化します。パソコンの画面にはテキストとともに参照すべきマニュアルを自動で表示したり、「虐待」「傷」「あざ」といった注意ワードをハイライト表示したりすることで、職員の電話応対をアシストします。

「児相の職員は日々記録業務に追われ、本来業務である面談や親子のサポートに支障が出ていました。FSVMの導入によって、電話応対のスピードアップと記録作成時間の短縮を実現し、職員の負担軽減に大きく貢献することができました」と波連 新は説明します。

FSVMの導入により電話応対や記録業務を軽減し業務効率化を実現した実績には、全国の児相から関心が寄せられ、多くの児相への導入が進みました。

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【プロフィール】

NTTテクノクロス株式会社

デジタルトランスフォーメーション事業部

第五ビジネスユニット

営業担当

波連 新



次なる課題「児相と警察との情報連携に潜む"運用のすき間"」

FSVM導入後も児相の職員と対話を重ね、児相が抱える課題を日々ヒアリングし、課題解決に向けた提案を続けてきました。

さらなる改善に向け着目したのが、警察との情報連携のシステム化です。先のこども家庭庁の報告によれば、児相に寄せられる相談経路で最多なのが警察等の機関で、全国で年間11万件以上(全体の51.7%)にのぼります。

通告や相談の中でも虐待に関するものは緊急度が高く、警察との連携による対応が欠かせません。下田 茜子は次のように述べます。

「例えば、公園にひとりで泣いている子どもを見かけた場合、すぐに家まで送り届けることが最善とは限りません。家庭内に虐待の疑いがあるケースもあり、その場合は子どもを家に帰さず、緊急避難的に保護する必要があります。警察が発見時に児相の対応記録を適切に照会できれば、迅速で的確な対応が可能になります」(下田)

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【プロフィール】

NTTテクノクロス株式会社

デジタルトランスフォーメーション事業部

第五ビジネスユニット

営業担当

下田 茜子



児相と警察をつなぐ新システムがスタート

適時・適切な情報の共有、簡易なオペレーションでそれを『仕組み化』する。

松田たちは、児相にある既存のシステムから抽出した情報を、必要に応じて他機関と共有する「intra-mart 自治体様向け情報共有システム」を開発しました(図1)。

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図1 intra-mart 自治体様向け情報共有システムの連携イメージ
児相が登録した児童情報などは、ほぼリアルタイム(1時間以内)に情報共有システムに反映。警察は、パソコンから最新の児童記録を照会することができる


「警察からの照会に対し、児相側でシステムを検索すれば、当該児童の記録をすぐに抽出できます。その検索結果をシステム上で警察と共有する仕組みです」と松田は説明します。

 

児童虐待などの周辺問題を研究してきた松田は、通告・照会・保護のオペレーションで何が"本当に"ボトルネックになるかを言語化し、照会理由のパターン化や共有の監査性などを検討段階から提案しました。『対応記録がデータ化・蓄積されれば、各機関との連携の部分は仕組みで担保できる』という仮説を検証し続け、情報共有に関する設計を進めてきました」と振り返ります。

児相が安全確認や一時保護を行う際に危険が予測される場合、警察に立ち合いを求める「援助依頼」、立ち入り調査が拒否された場合に当該保護者を告発する「告発状」などのテンプレートが用意されているため、必要な書類も簡単に作成可能です。

児相のDXプロジェクトを支えるNTTテクノクロスの"強み"

『intra-mart 自治体様向け情報共有システム』は対応が急務となっている自治体への導入が決まり、プロジェクトが進行中です。これには幅広いシステム構築経験や業務DXのノウハウ、そして児相業務に長く並走してきた経験と現場知識が活かされています。

「児相の業務は法令、省令などによって定められていますが、その変更によって各種情報の保持期限、書類様式などが変わることがあります。intra-martのローコード開発機能を使えば、そうした変更にも迅速に対応可能です。また、intra‑martは大企業の基幹システムにも多数採用されています。機能性に優れているのはもちろん、信頼性・安定性も非常に高い。極めてセンシティブな情報を扱う児相業務でも安心して利用できます」と下田が語ります。


波連は児相が連携する機関は警察にとどまらず、さらに多様な関係先との情報共有が求められると今後の展開について語ります。

「児相の連携先は警察だけではありません。今後は児童養護施設や児童自立支援施設、学校、幼稚園、保育所、教育相談所、保健所など多様な機関との情報共有が求められる局面が増えていくでしょう。今後、共有先の拡大、それに伴う業務変更・追加にも柔軟に対応します。この仕組みを広めていくことで、子どもを守るための連携を社会に根付かせていきたいです」(図2)。

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図2 情報共有システムの強みと今後の可能性
intra-martのローコード開発機能を活かし、連携先の追加にも柔軟に短期間、低コストで対応できる。


NTTテクノクロスは今後も児相や自治体に寄り添い、これまでの経験と蓄積したノウハウを活かして社会課題の解決に向けた取り組みを伴走支援していく考えです。



*1:令和6年度 児童相談所における児童虐待相談対応件数

(出典:https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/a176de99-390e-4065-a7fb-fe569ab2450c/844e601a/20260130_policies_jidougyakutai_45.pdf
* 記載されている商品名・会社名などの固有名詞は一般に該当する会社もしくは組織の商標または登録商標です。

*本記事の内容は執筆時点のものです。

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