健康情報のデジタル化が健康経営®の推進を加速 「HM-neo」のメリットとその可能性は(健康経営の課題解決と未来編)
健康経営の関心が高まっている中、健康経営に寄与するシステムの期待できるメリットとその可能性について、産業保健専門家で医師の土肥誠太郎氏とNTTテクノクロスの谷 一剛が語り合いました。
前回記事で健康経営の本質を説き明かし、現場の課題を論議しました。健康経営の推進においては、やはり健康情報のデジタル化が強力な後押しとなります。なぜなら従業員の生活習慣や既往歴を把握することで、従業員の今を知り、将来の健康状態を予測できるからです。しかし紙の情報やエクセルの集計では、現状の把握や分析をすることが困難です。この課題を解決するのが、NTTテクノクロスが提供する健康管理システム「HM-neo(エイチエムネオ)」です。健康経営に寄与するシステムの期待できるメリットとその可能性について、産業保健専門家で医師の土肥誠太郎氏と、HM-neoのサービス企画を担うNTTテクノクロスの谷 一剛が語り合いました。
【プロフィール】
土肥 誠太郎氏
株式会社MOANA土肥産業医事務所
代表取締役社長
医師・医学博士
谷 一剛
NTTテクノクロス株式会社
デジタルトランスフォーメーション事業部
第四ビジネスユニット
統括マネージャー
組織や個人の健康度を知るには「データ」が不可欠
――健康経営に取り組む企業は従業員の健康情報をどのように収集・管理しているのか。その現状を教えてください。
土肥:
私が代表を務める事務所では様々な企業の産業保健ニーズに対応していますが、健康情報の収集・管理をシステム化している企業はまだ少数で、健診情報は紙で記録・保存しているところが多いですね。ある程度規模の大きな組織でもエクセル管理がメインであるケースも少なくありません。
――従業員数が多くなったり、事業所がいくつもあったりする会社だと、紙やエクセルでの管理では大変ですね。
谷:
経営層は健康経営によって従業員が本当に健康になっているのか、結果を知りたがります。そうした期待に応えるのも人事など健康管理部門の役割です。しかしアナログな管理を行っていると、どういう情報がどこにあるのかもなかなか分かりません。
土肥:
簡単な一次集計ならエクセルで行えますが、ある指標とある指標を組み合わせたクロス集計・分析となると、やはり限界があります。事業所全体の集計ならともかく、従業員一人ひとりに個別のデータ解析する場合には、多数のシートを作らないといけない。従業員数が数百、数千となると現実的ではありません。
例えば、従業員が受けるストレスは、会社への信頼度や組織の特殊性によってストレス度合いが変わるので、一般化が難しいとされています。自社のストレスチェックはその人の業務内容や役割・立場、組織特性などを考慮して判断しなければならない。自社のストレス度合いは自社の指標に基づくしかないのです。そのためには「データ」が不可欠です。データがあれば集団の特性に基づいた判断が可能になる。紙の情報をデジタル化するとともに、クロス集計・分析を可能にする土台(基盤)や環境が必要でしょう。
谷:
NTTテクノクロスは健康経営のデジタル化を実現する健康管理システム「HM-neo」を提供しています。健診や面談の結果を「データ化」しシステム上で一元管理することで、従業員の健康管理を効率的に行うことができます。集約されたデータをもとにクロス集計や分析も可能です。健診データの総合判定結果を部署別、年代別等の様々な観点で集計し、分析することで組織の健康課題や特長を見つけることができます。
様々な指標のクロス集計で分析やリスク予測も可能に
――HM-neoでは具体的にどのようなことが可能になるのでしょうか。
谷:
健診や面談の内容を個人カルテとして記録できます。生成AIを実装しており、面談記録の要約も簡単に行えます。労務管理情報や病歴や検査歴、ストレスチェック、あるいは有害物質を扱うといった特殊な業務歴なども個人カルテに紐付けて管理可能です。個人カルテに様々なキーワードをタグ付けすることで、検索性も向上します。
集計と分析機能も充実しており、その結果は見やすいダッシュボード画面で確認できます。労基署集計のほか、産業医意見書、紹介状、健診結果票、特殊健診個人票、ストレスチェック結果票なども作成可能です。産業保健スタッフをはじめとする健康管理部門の事務的な作業を大幅に効率化できます。
土肥:
産業医の立場からすると、個人や組織の健康度やストレスチェックの経年推移を簡単に確認できるのは便利ですね。健康度が問題なければ、それを保持できるようにアドバイスする。悪化していれば、より厳しく指導したり別の打ち手を考えたりする。経年推移を可視化できれば、こうした対応を的確かつ効率的に行えます。
図1 ダッシュボードのストレスチェック画面
80項目に及ぶストレスチェックを行い、その結果を図のように可視化する。「職場の健康リスク」と「いきいき度」を判定し、 組織のストレス度合いが分かる。会社全体のほか、事業所や部署単位で分布を見ることも可能だ
具体的には、未受診者や再検査が必要な従業員を検索により抽出し、対象者に一括メール送信し、面談予約を行うことが可能になりますね。これらを1つのシステム上で行えるメリットは非常に大きいです。
図2 ダッシュボードの受診状況確認画面
健康診断、面談、ストレスチェックなどの受診率を一目で確認できる。 フィルターの選択で対象者やコースを絞り込むことも可能だ。ドーナツチャートの各項目を選択すれば、個人ID閲覧も可能。
――よりきめ細かな健康管理が可能になり、産業保健スタッフの業務効率化につながるわけですね。
土肥:
健康度を高める施策もより効果的に行えるようになります。例えば、生活習慣の改善を促す手法には、疾病の発症リスクが高い人を特定して改善を働きかける「ハイリスクアプローチ」と、特定の人ではなく組織全体に対してリスク低減を働きかける「ポピュレーションアプローチ」があります。
一般的にはリスクの高い人に働きかけるハイリスクアプローチを採ることが多いのですが、これだけでは組織の健康度を高めるための予防効果は限定的です。リスクが高くない人の中から、いずれハイリスクな人たちが出てくるからです。
リスクがそれほど高くないうちに適切なポピュレーションアプローチを併用しなければ本当の意味での改善にはなりません。
そのためには個人のリスク度合いとともに、組織全体のリスク分布も可視化し、誰がどこに分布しているかまで把握する必要があります。
――データの一元化・可視化によって、できることが大きく広がりますね。
谷:
経営層への報告もより説得力のある形で行えます。健康度の経年推移を自社のエビデンスに基づいて示せますからね。
土肥:
健康経営の観点では、もう1つ重要な視点があります。それは従業員の視点です。生活習慣の改善が必要な人には産業保健スタッフが保健指導を行いますが、最終的には本人がセルフケアすることが望ましい。従業員自身が自分の健康情報にアクセスできる環境が整うことで、セルフケアの促進や健康リテラシーの向上にもつながります。
谷:
HM-neoは従業員にもマイページが提供されます。健診結果や勤務状況などの情報を自分で確認し、健康行動につなげることができるようになります。産業保健スタッフの保健指導と本人の自発的な健康行動が両輪となり、組織全体の健康増進が期待できます。
伴走支援で運用定着を支援 ユーザーの声で進化を継続
――NTTテクノクロスはなぜこのようなシステムを提供できるのでしょうか。その強みを教えてください。
谷:
ユーザーのニーズをいち早く機能に反映する製品開発力だと思います。ユーザーとの定期的なミーティングやユーザー行動の分析を通じて、お客様が何を求めているかを常にキャッチしています。また、HM-neoのアドバイザーとして土肥先生から産業医の視点からの様々なアドバイスをいただき、改善を行っています。専門的な視点からのアドバイスを受けることで、潜在的なニーズや課題を発見でき、ユーザーに必要な機能を先回りして実装できるのがHM-neoの大きな特長です。
HM-neoはパッケージ版とクラウド版があり、ニーズに合わせて選択が可能です。データをダッシュボード化するためには健康経営分析支援ツール「HM-viewer」が必要ですが、クラウド版はHM-viewerを標準実装しています。
導入後、1年間は伴走支援するのも他社にはない強みです。カスタマーサポートとは別に、専任の担当者がお客様に寄り添い、基本的な使い方から機能の活用法まで丁寧にサポートします。「こういうことがやりたい」という要望にその実現方法も紹介し、運用定着までを支援します。
――ユーザーの声はどうやってキャッチしているのですか。
谷:
お客様から直にご要望をいただくほか、ユーザー会を開催し、お客様の声を募っています。ユーザー会では、事前にお客様から伺った要望の多い機能を会場で発表し、その場で投票していただくというユニークな取り組みを行っています。この投票結果のランキングが開発の優先度に反映され、次期バージョンアップで実装していきます。いわばユーザー参加型の製品開発ですね。昨年初めて実施し好評だったので、今後も継続していく予定です。
――HM-neoはAI技術の活用にも力を入れているそうですね。
谷:
既に面談記録を要約する生成AIを実装していますが、新たに面談内容をリアルタイムに文字起こしができる機能を提供予定です。2025年度内のリリースを目指しています。
土肥:
これが実現すると、面談内容を入力する手間がほとんどなくなり、圧倒的な負担軽減になります。産業医面談などに携わる立場としては、従業員と向き合う時間が増えることが大きいですね。(モニターを見るのではなく)相手と向き合い、その表情を見て面談できるからです。間違いなく面談の質の向上につながるでしょう。
――最後に健康経営に取り組む企業にメッセージをお願いします。
土肥:
健康経営の中心にあるのは従業員のWellbeing(ウェルビーイング)です。従業員一人ひとりに健康でいてもらうために何が必要か、常に考えることが重要です。そのためには、健康データを活用しながらエビデンスに基づいてできることをきちんとやることです。そうすることで、健康経営は単なる健康管理の枠を超え、企業と従業員双方の持続的な成長と幸福を支える基盤となるでしょう。
谷:
当社はHM-neoの提供を通じて、企業の健康経営推進を長きに渡り支えてきました。今後も健康経営に課題を抱えている企業、これから健康経営に取り組む企業の声に耳を傾けながら機能強化と使いやすさの向上に努めていきます。
*「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
*「HM-neo」はNTTテクノクロス株式会社の登録商標です。
* 記載されている商品名・会社名などの固有名詞は一般に該当する会社もしくは組織の商標または登録商標です。
■関連情報
・社会的関心が高まる「健康経営®」企業が取り組む意義とその本質とは(健康経営の潮流とその課題編)
健康経営の本質を説き明かし、現場の課題を論議した前回記事です。
健康経営の関心が高まっている中、健康経営が目指すゴールとは何かを産業保健専門家で医師の土肥誠太郎氏とNTTテクノクロスの谷 一剛が語り合いました。



