IPv6とNGN
2011年2月に遂にIPv4アドレスが枯渇しました。IPv6アドレスの本格化に向けて、NGNとIPv6インターネットとの本格化に向けて、NGNとIPv6インターネットとの相互接続の仕方について紹介します。
テクノロジーコラム IPv6
- 2011年05月01日公開
はじめに
IPv4 アドレスの枯渇
2011年2月に、前年の予測どおり、IANA(*1)が管理しているIPv4アドレスの在庫が枯渇しました。(*2)このことにより、直ちにISP からIPアドレスを提供されなくなるわけではありません。物流にたとえると、ある製品が製造終了したが、製品を取り扱っている卸業者や販売店が抱える在庫がある範囲ではまだ入手可能、という状態と言えます。
しかし、いずれ来る卸業者や販売店の在庫切れに備える必要があり、さまざまな組織が、その対応をしています。例えば、2008年度には総務省の「インターネットの円滑なIPv6移行に関する調査研究会」が報告書(*3)を公開しました。
この報告書では、対策として以下の3つの施策を比較評価しています。
(1)NAT/NAPT(*4)による解決
(2)未使用IPアドレスの回収
(3)IPv6への移行
報告書では、それぞれの施策について一長一短があるとしながらも、最終的には IPv6への移行 が根本解決としています。
【用語解説】
- *1:IANA(Internet Assigned Numbers Authority)
- インターネット上で利用されるアドレス資源(IPアドレス、ドメイン名、プロトコル番号など)の標準化や割り当てを行っていた組織。
- *2:IPv4アドレスの在庫が枯渇しました
- http://www.nic.ad.jp/ja/ip/ipv4pool/
- *3:総務省の「インターネットの円滑なIPv6移行に関する調査研究所」
- http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/2008/pdf/080617_2_bt1.pdf
- *4:NAT/NAPT
- 1つのグローバルIP アドレスを、複数の端末で共有するための技術で、通常はプライベートなIPアドレスを持った端末がインターネットにアクセスするために使用される。
NGNとIPv6の相互接続について
IPv6に移行する際に留意すべきこと
IPv4アドレスが枯渇し、IPv6で運用されているサイトも出現しています。NGN経由でISPを使用するときに、NGNとインターネットを問題なく利用するためには、IPv6 インターネットとNGNについての関係についても考慮する必要があります。
NTT東日本およびNTT西日本が公開している仕様書(*5)に書いてある通り、NGN上でもIPv6ネットワークは使用できます。しかし、NGNとIPv6インターネットの両方を契約しているユーザは、両方のサービスから IPv6アドレスを割り当てられるため、NGNとインターネットの両方のサービスを利用するときに、どちらで割り当てられたアドレスを使用すればよいか分からないといった問題が発生します。
もし、ユーザが使用する送信元アドレスを間違えてしまうと、通信ができなくなります。これは、NGNとIPv6インターネットに相互接続性がないために起こる問題で、IPv6プレフィックス問題と言われていました。
この問題に対しては、社団法人日本インターネットプロバイダー協会とNTT東日本およびNTT西日本で協議した結果、ユーザネットワークとIPv6インターネットを2通りの方法で接続することを合意し、2011年度にサービスが開始する予定となっています。この2通りの方法は、「ネイティブ接続方式」と、「トンネリング接続方式」と呼ばれ、それぞれの接続仕様も公開されています。
ネイティブ接続方式は、ユーザネットワークからIPv6 トラフィックを、NGNとIPv6インターネットへそのまま流すことを可能とする方式です。ユーザは、IPv6のISP から割り当てられるアドレスを使って、NGNのサービスも、IPv6インターネット上のサービスも利用できます。さらに、NTT東日本およびNTT西日本の仕様では、網内折り返し機能が定義されていて、ISP 契約者間の通信は、NGN網内に閉じて行えます。ただし、通信品質はベストエフォートとなります。
トンネリング接続方式は、NGN契約時にレンタルされるHGWと、エンドユーザが端末の間にIPv6トンネル対応アダプタという装置を別途用意して通信を行います。端末からIPv6インターネットへの通信では、NGN網内のIPv6集約用接続装置とIPv6トンネル対応アダプタ間でトンネル(PPPoE を使用)が設定され、トンネルの中で端末とインターネット間のIPv6データが送受信されます。エンドユーザが利用する端末には、IPv6のISPから割り当てられるアドレスが使用されます。
NGN網内のサービスを利用する場合は、IPv6 トンネル対応アダプタにて、端末が使用している送信元アドレスが、NGNで割り当てられるIPv6アドレスに変換されます。つまり、IPv6 でも NAT が利用されることになります。また、網内折り返し機能も定義されていないため、IPv6 ISP契約者間の通信はIPv6インターネット上で折り返されることになります。
この2つの方式が採用されるまでには、ISP各社への公平性の確保と、ISP各社の要望を実現するために、関係者の間での協議が行われました。ユーザは自身が契約するISPによって、ネイティブ接続方式かトンネリング接続方式のいずれか一方を使うこととなるため、両方の特徴を理解しておく必要があります。
当社の取組み状況
当社のホームページも 2009年にIPv6 対応を済ませ、IPv6 Enabled Program(*6)に登録しています。
また、IPv6に対応しているソリューションには、メール誤送信防止ソフト「CipherCraft/Mail」やNGN対応IP電話ゲートウェイ「Crossway」があります。Crossway はNGNのIPv6アドレスを端末に割り当てることができるDHCPv6-PD(*7)機能が搭載されているため、基本的なIPv6通信には対応しています。今後は、NGNとIPv6インターネットの相互接続を視野に入れた機能拡充を行っていきます。
既存のネットワークのIPv6対応や、NGNとIPv6の相互接続まで視野に入れた対応などについてご不明な点などがありましたら、下記までお気軽にお問合わせください。
【用語解説】
- *5:NTT東日本およびNTT西日本が公開している仕様書
- http://www.ntt-east.co.jp/info-st/mutial/ngn/index.html
- *6:IPv6 Enabled Program
- IPv6 フォーラムにより運用される、IPv6 運用促進のためのプログラム。一定の基準に達すると、WWW サーバ、あるいはISP として IPv6 ネットワークの運用が安定して運用されていると認定される。
- *7:DHCPv6-PD
- ルータに対して設定可能なネットワーク情報を、DHCPv6 を使用して配布する機能。ルータの自動設定として使用される。
NTTソフトウェア株式会社