生物多様性とは? NTTテクノクロスが取り組む理由
生物多様性とは? 企業のサステナビリティ活動事例として、NTTテクノクロスのビーチクリーンや生態系保全、テクノロジー活用を紹介します。
広報ブログ 第72回
- 2026年02月13日公開
近年、企業の社会的責任として「サステナビリティ」への取り組みが強く求められています。その中でも、自然をより良い状態にして未来へつなぐ「ネイチャーポジティブ*1」の実現のための活動が広がっています。それに伴い、「生物多様性」の保全が重要なテーマとして注目されています。
私たちNTTテクノクロスでは、多岐にわたる社会貢献活動を推進しています。その一環として、社員とその家族が参加するビーチクリーン活動を実施しており、その中で生態系保全について学ぶ機会も設けています。
この活動を総務部と共に推進しているのが、社内コミュニティ「環境保全Lab」のリーダーの谷野要さんです。本記事では、谷野さんへのインタビューを通して、「生物多様性とは何か」という基本的な問いから、企業や私たち一人ひとりが自然とどう向き合うべきかまで掘り下げていきます。

【プロフィール】
谷野 要(たにの かなめ)
情報セキュリティ推進部門所属。セキュリティガバナンスとAIガバナンスの両業務を担当。
また現在、情報セキュリティ大学院大学にて修士研究中。前職の国際環境NGOでは長年、IT責任者を務める。
ライフワークは環境保全活動の実践と、蝶・鳥・ムササビなどの観察。
環境保全に関するSNSでの情報発信(総フォロワー1.7万人)のほか、小諸日記の運営なども行う。
――本日はよろしくお願いします。早速ですが、谷野さんは社内で生態系保全活動を推進されていますが、そもそもどのようなきっかけで環境問題に関心を持つようになったのでしょうか? ご自身のバックグラウンドと合わせて教えてください。
環境問題に関心を持つようになったきっかけは、子どもの頃に見た「ふる里の自然の変化」でした。
奈良県の山奥で育ったのですが、家の周りには野池や雑木林があり、イシガメやモツゴ、ゲンゴロウなど、たくさんの生き物が見られました。ところが、ある時その場所が宅地開発され、池も森もすっかり失われてしまいました。久しぶりに帰省したとき、あの豊かな自然が更地になっている光景を見て、「どうして守れなかったんだろう」と強く感じました。それ以来、野生生物の暮らす環境を守ることに自分がどう関われるかを考えるようになりました。
そもそも「生物多様性」とは? なぜ私たちの暮らしに重要なのか
――谷野さんの活動の根幹には「生物多様性」というキーワードがありますね。最近よく耳にしますが、改めて「生物多様性」とは何か、私たちにも分かりやすく教えていただけますか?
「生物多様性」とは、専門的には、①生き物の種類、②遺伝的な違い、③生息環境――この3つの多様性のことですが、端的に言うと、地球上のあらゆる生き物が、それぞれの個性や環境の中で相互につながり関係しあいながら生きていることを指します。
多様性が豊かなほど、生態系は強く、災害や気候変動にも耐えられる"しなやかさ"を持ちます。
そして私たち人間もその生態系の一員であり、生物多様性に支えられて生きています。
――多様な生物が相互に関係しあうことで、安定した生態系を築いているのですね。では、その生物多様性が失われると、私たちの社会や暮らしに具体的にどのような影響が及ぶのでしょうか?
例えば「食べ物」が分かりやすいですね。海の幸や山の幸、農作物など、私たちの「食」は生物多様性の恵みからもたらされています。
また分かりやすい概念図として、SDGsの『ウエディングケーキモデル』があります。これはSDGsの17個の目標をケーキの層に見立てたもので、一番下の土台が「環境」、その上に「社会」、一番上に「経済」が乗っているという考え方です。このモデルが示すように、経済や社会の土台には「健全な生態系」がある。その土台が崩れれば、私たちの生活も成り立たなくなります。
つまり、生物多様性は「自然を守るための考え方」だけでなく、「私たちの暮らしを支える基盤」とも言えます。
SDGsの『ウエディングケーキモデル』
(出典:Stockholm Resilience Centre "The SDGs wedding cake")
「ビーチクリーン」活動を通してさまざまな環境問題を「自分事」に
――その大切な生物多様性を守るための具体的なアクションとして、なぜNTTテクノクロスではビーチクリーン活動をされているのでしょうか?
私たちがビーチクリーンを行う上で大切にしているのは、単なる清掃活動で終わらせないことです。せっかく自然のフィールドに来ているのにごみ拾いだけで終わるのはもったいないという思いから、ビーチクリーンという活動を起点に、参加者が海洋ごみや気候変動といったさまざまな環境問題を自分事として捉えるきっかけとなるような仕掛けを考えました。
例えば、「海洋プラスチック」や「マイクロプラスチック」といった問題があります。世界自然保護基金(WWF)推計によると、私たちは1週間で約5g、クレジットカード1枚分のプラスチックを摂取していると言われています。この海洋プラスチックはいったいどこから来ているのか、自分とどう関わりがあるのか、考えてもらう機会を設けています。
(参考:WWF "YOUR PLASTIC DIET")
それから、もう一つ、最近注目されているものに「ブルーカーボン」があります。ブルーカーボンとは、端的に言えば海の生態系により取り込まれる炭素のこと。「カーボン」の言葉が示すとおり、海草藻場・マングローブ林・塩性湿地などといった海の生態系は、大気中の二酸化炭素(CO₂)を吸収し、地球温暖化の緩和にも重要な役割を担っています。
(参考:環境省「ブルーカーボンとは」)
ビーチクリーンという一つの活動でも工夫次第では、海洋ごみの問題、生物多様性劣化の問題、気候変動の問題と、さまざまな環境問題を「自分事」としてとらえてもらうきっかけにできると考えています。
ビーチクリーンでの集合写真。最後列右から2人目が谷野さん。
清掃で終わらない。ビーチクリーンを「学びの場」にする工夫
――単にごみを拾うだけでなく、活動前に「どんな生き物がいるか」といったレクチャーをされているそうですね。こうした「学びの場」としての工夫には、どのような思いが込められているのでしょうか?
ビーチクリーンは、単にごみを拾うことだけが目的ではないと思っています。
実はこの活動には毎回、社員の家族やお子さんも参加してくれます。
砂浜では、カニや貝、海藻、漂着した魚や鳥など、普段は気づかない多くの命に出会うことができます。
私自身、ライフワークとして続けているムササビの観察会やアサギマダラの調査を通して、親子が一緒に生き物を見て「わぁ!」と感動を共有する瞬間を何度も見てきました。
その体験が、子どもたちの心に自然への思いやりを育てるきっかけになると感じています。
だからこそ、ビーチクリーンも「学びの場」として、親子や仲間と一緒に自然を感じ、守る意識を育てる時間にしたいと思っています。
この活動での体験が、子どもたちにとっての原風景となり、未来につながる優しさの種になればうれしいですね。
参加者を前にレクチャーを行う谷野さん。
ビーチでの気づきが技術になる。現場と開発をつなぐ思い
――ビーチクリーンという現場での活動と並行して、NTTテクノクロスは、環境省が運営する「生物多様性見える化システム」の構築など、技術力を生かした貢献もしています。一見すると別の活動に見えますが、このビーチクリーンで得られた現場の知見や課題意識が、生かされた場面はありましたか?
まず私が「環境保全Lab」で活動していることを知った方から、ぜひ、環境省「生物多様性見える化システム」の構築プロジェクトに「生物多様性のアドバイザー」として参画してもらえないかとオファーをいただきました。前職の仲間や環境保全に関わる知人にも協力を仰ぎ、NTTテクノクロスの仲間たちの多大なる努力のもと、無事に開発プロジェクトを遂行することができました。このことを通し、少しでも社会や会社に貢献できていればと思います。
長い開発の期間中、多忙を極める中でも、プロジェクトメンバーの多くがビーチクリーンに参加してくれました。また開発プロジェクトが一段落した今でも、ビーチクリーンに参加してくれています。これはプロジェクトを通じて、あるいは「環境保全Lab」の活動を通じて、環境保全について「自分事」化した結果ではないかと感じ、本当にうれしく思います。
だからこそ、「生物多様性見える化システム」は、単なるデータベースや分析ツールではなく、現場で感じた課題や自然の変化を誰もが共有し、次の行動につなげるための"橋渡し"のような存在だと考えています。そのシステムの思想や構築には、メンバー自身が環境活動から得た実感も反映されているのです。
NTTテクノクロスはテクノロジーの会社ですが、そのテクノロジーを生み出しているのは人間です。
そうした思いを持つ社員たちが生み出すテクノロジーは、地球の環境を守ることにもつながっています。
社員の思いが力に。私たちの可能性と未来へのメッセージ
――今後の活動の広がりも楽しみです。最後に、谷野さんがこれから社内で実現したいことや、この記事を読んでいる方々へのメッセージをお願いします。
企業ができる環境保全への貢献といえば、企業活動が環境に与える負荷を下げることや、環境保全団体への支援といった貢献に加えて、実はもう一つ「大きな力」を持っています。
それは、「社員の思いや行動」という巨大なリソースが生み出す力です。
NTTテクノクロスには、環境問題をはじめとする社会課題に真摯に向き合う社員がたくさんいます。また、NTTグループに目を向ければ、その可能性はさらに広がると感じています。
この仲間たちが思いを「一つ」に束ね、行動すれば、計り知れない力になると信じています。
そして、その力は、環境問題をはじめとする多くの社会課題を解決することにもつながります。
私一人の力は小さいものですが、まずは社内の仲間たちの思いをつなぐことから始め、将来的にはNTTグループ全体にも良い輪を広げていけるような、そんな活動をしていきたいですね。
最後に、この記事を読んでいる皆様へのメッセージです。
「私たちにも簡単にできる環境活動はなんですか?」とよく聞かれます。
これは実はとても簡単です。会社や家庭でもできます。それは、どんな環境問題があるのか、日本や地球で何が起きているのか、その事実・実態を「正しく知る」ことです。
例えば、日本自然保護協会、日本野鳥の会、WWFジャパンなど、科学的論拠に基づいた発信を行っている環境保全団体のWebサイトを読むこともその一つです。
今後も、テクノロジーと環境保全をクロスした情報発信を行っていきますので、応援よろしくお願いいたします。
■まとめ:テクノロジーと人の思いで「生物多様性」の未来をつくる
今回は、NTTテクノクロスの「環境保全Lab」リーダーである谷野さんへのインタビューを通して、「生物多様性」保全への挑戦を追いました。谷野さんのお話から見えてきたのは、次の3点です。
まず「生物多様性」が私たちの食や経済を支える社会基盤であるということ。次に、ビーチクリーン活動は単なる清掃にとどまらず、海洋ごみや気候変動を「自分事」として捉える学びの場となりうること。そして、そこで得た現場での体験や思いが開発の現場で生かされ、社会貢献につながっていくということです。
谷野さんが最後に語ったように、私たちにできる環境保全の第一歩は、まず事実を「正しく知る」こと。この記事がそのきっかけとなれば幸いです。NTTテクノクロスは、これからも高い技術力と社員一人ひとりの思いを掛け合わせ、豊かな自然を未来へつなぐ挑戦を続けていきます。
*1:ネイチャーポジティブとは、自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させること。
* 記載されている商品名・会社名などの固有名詞は一般に該当する会社もしくは組織の商標または登録商標です。
* 本記事の内容は執筆時点のものです。
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ビーチクリーンでの集合写真。最後列右から2人目が谷野さん。
参加者を前にレクチャーを行う谷野さん。
