PCセキュリティ点検が「当たり前」の未来へ。社内の課題解決から生まれたmieten(ミエテン)開発チームの挑戦
NTTテクノクロスのプロダクトmieten(ミエテン)はどうやって生まれたのか。その開発秘話についてご紹介します。
広報ブログ 第61回
- 2025年11月11日公開
NTTテクノクロスは、NTTの研究所の技術と世界の先端技術を組み合わせ、お客さまのニーズに応えながら、持続可能な社会に役立つ新しい価値を作り続けることを目指しています。
その象徴ともいえるプロダクトがmieten(ミエテン)です。mietenは、PCのセキュリティ点検をクラウド上で行うサービスで、国内外の企業に安心と信頼を提供しています。
このサービスを支えているのが、技術力と熱い情熱を持つmieten開発チームの朝倉、長房、千歳、小滝です。今回は彼らに、新たにサービス開発を進めた裏側そして、幾多のチャレンジやサービスへの思いについて伺いました。
左から、小滝、長房、朝倉、千歳
【プロフィール】
朝倉 太郎
セキュアシステム事業部 第二ビジネスユニット マネージャー
2002年入社
mietenのビジネスオーナーを務める。
長房 真広
セキュアシステム事業部 第二ビジネスユニット マネージャー
1988年入社
mietenの調査研究時点よりチームに加わり、セールスおよびプロモーションを務める。
千歳 広大
セキュアシステム事業部 第二ビジネスユニット アシスタントマネージャー
2011年入社
mietenの市場展開の時点からチームに加わり、開発リーダーを務める。
小滝 純司
セキュアシステム事業部 第二ビジネスユニット リーダー
1999年入社
mietenの保守・メンテナンス担当を務める。
■PCセキュリティ点検自動化サービスmietenとは?
mietenはビジネスの現場における日常的なPCのセキュリティ点検を自動化し、点検状況の可視化によって企業のセキュリティガバナンスを強化するプロダクトです。
2024年に販売開始され、様々なお客さまにプロダクトの導入・検討をいただいています。
■mieten誕生までの隠された挑戦
―mietenはどのようにして開発、販売されることになったのでしょうか?
朝倉:
2020年から、新規ビジネスの創出に向けて端末セキュリティやサイバー衛生についての調査研究を開始しました。
調査を進めていくと、多くの企業で日常的なセキュリティ対策が十分に行われていない現実が明らかになりました。
例えば、IT資産管理ツールを導入して対策を試みている企業もありますが、ツールが多機能すぎて使いこなせていなかったり、社内全体のセキュリティ状況を正確に把握できていないケースも多く見られました。つまり、PCの利用者側が日常的なセキュリティ対策ができていないことで、企業としてのセキュリティガバナンスが脅かされているという課題を抱えている企業が多かったのです。ここに新しいビジネスのチャンスがあるとひらめきました。
さらにこの問題に対する解決方法を調査・検討していくと、当社で利用されている「自社開発のセキュリティツールのノウハウとリソースが活かせるのではないか?」「この仕組みこそ、多くの企業が求めているものではないか?」という点に行きつきました。

セキュアシステム事業部 第二ビジネスユニット マネージャー 朝倉 太郎
―こうしてmietenという新たなプロダクト開発への道が拓かれたのですね。
社内のセキュリティ対策の課題を大幅に改善した社内開発のツールとはどんなものなのでしょうか?
朝倉:
当社では社員が利用する端末のセキュリティ点検に長年課題を抱えていました。セキュリティを担保するため、半年に一度、社員一人ひとりが自身が利用しているすべての端末について一台ずつ手作業でExcelのチェックリストを利用し目視で点検を行っていたのです。この方法は端末にインストールした各ソフトのバージョンが最新になってるかをひとつひとつソフトウェアを開いて確認するなど作業負担が大きく、また結果が作業者に依存するため信頼性にも課題がありました。そのうえ、全社としての集計にも手間と時間がかかり、ガバナンスの徹底が見えにくい状況でした。昨今のベンダーによる頻繁なソフトウエア更新への対応には程遠い状況だったと言えます。
こうした課題を解決するために、点検作業と集計を自動化するツールが開発されました。
このツールの使用により、毎日点検をしているにもかかわらず、点検・集計にかかる時間が約85%短縮されました。さらに、チェックリストによる確認では見逃していたソフトウェアの更新状況がリアルタイムに利用者に通知ならびにダッシュボードで可視化されるため、社員のセキュリティ意識の向上にもつながり、対応率が劇的に改善しました。点検結果は、経営層もダッシュボードで把握できるため、ガバナンス強化にも貢献しました。
この成功体験と蓄積されたノウハウが、mieten開発に大きく活かされることとなったのです。
―なるほど、社内にすでにあったツールとノウハウが生かされたのですね。順調に開発が進められたように思えますが、振り返ってどのような苦労があったのでしょうか。
朝倉:
社内利用のツールとノウハウがあったとはいえ、それまでのキャリアの中で受託開発以外は経験してこなかった私が一人で新プロダクトの調査研究進めることは、本当に苦労の連続でした。例えば、ニーズの検証を行うにも、まずは検証先を見つけるところから始めなければならず、その過程には想像以上の時間と労力を費やしました。
―苦労が伝わってきますね。そのような状況の中でどのようにして大変な時期を乗り越えたのでしょうか?
朝倉:
組織を超えて、社内の有識者と連携することです。社内には多くのプロダクトがあり、プロダクト開発経験者から、ビジネスのヒントや現状についてヒアリングを行いました。また、プロダクトの既存顧客を紹介いただき、ユーザーのニーズ検証や、プロトタイプを使ったPoC(実証実験)も実施することができました。社内の組織をまたいでの連携が行えたことで、一人では超えられない壁を超えることができました。
今では、営業やプロモーションを担当する長房さん、開発の千歳さん、保守・メンテナンスを担当する小滝さんといったメンバーが揃い、mietenチームとしてしっかり動ける体制が整いました。任せられる仲間がいることで、とても心強く感じています。
―困難を乗り越え、無事に市場展開されたのですね。mietenの導入や検討をいただいているお客さまと接する中で、開発担当と保守担当として意識していることはありますか?
千歳:
開発担当として、お客さまとのトライアルや新機能の検討に関わることがあります。お客さまにヒアリングするたびに、今まで見えてこなかったニーズが見つかり『mietenのプロダクトとしての価値を最大限に引き出すにはどんな機能が必要なのだろうか』ということを技術面から考える点が特に難しいと感じています。しかし、その分最適な機能を新機能として提供できた時に開発担当としてのやりがいを感じることも多いですね。![]()
セキュアシステム事業部 第二ビジネスユニット アシスタントマネージャー 千歳 広大
小滝:
保守・メンテナンスの面では、お客さまによりNW環境などの条件が異なるため、お客さまにmietenをスムーズかつ適切に使用いただけるように、丁寧なヒアリングを重ねながら導入作業を進めています。
この過程で導入時の注意点が明確になり、さまざまな環境でPCを利用・管理されているお客さまに対応できる知識が蓄積されていきます。このノウハウを、次のお客さまの導入に活かしています。
セキュアシステム事業部 第二ビジネスユニット リーダー 小滝 純司
■多様な現場で広がるmietenの価値
―mietenを導入されたお客さまからはどのような反響をいただいていますか?
千歳:
導入いただいているお客さまの中には、オフィスで使用されているPCだけでなく、リモートワークなどにより社員が自宅で使っているPCも同じように管理をしたい、というニーズもありました。そこで、リモート用のPCでも管理を可能にする機能を新たに開発し、導入していただくことで、リモートPCを使用するお客さまから「今まで管理できていなかった端末も一元的に管理できるようになった」と喜ばれています。
朝倉:
これまでも様々なお客さまに導入をいただいておりますが、教育機関のお客さまでは、業務が多忙な先生方が使用するPCセキュリティの管理が難しく、ソフトウェアのアップデートが適切に行われていないことなどが課題となっていました。そうしたケースでは、mietenの自動で全端末を点検できる機能が大きな効果を発揮しています。
また、海外に拠点のあるお客さまにも使用いただいています。株式会社ビップシステムズ様のベトナム法人にてmietenを導入いただいており、ご好評をいただいています。今後も国内だけではなく海外での展開も進めていきます。
ビップシステムズ株式会社様に聞く、mietenの価値
mietenを導入いただいているビップシステムズ株式会社様に、mietenの価値や魅力についてお話を伺いました。
BIP SYSTEMS VIETNAM CO., LTD
General Director 柏木 武志様
―mietenの導入以前に貴社が抱えていた課題について教えてください。
mieten導入以前に使用していたセキュリティ点検ツールは、PCのウィルス検知およびPCを使用する上での禁止イベントを登録し、当該事象が発生した際に通知が届くというものでした。
弊社ではセキュリティ面において「危険な状態を事前に予防する」部分がカバーできておらず、mietenがこの課題に対して最適なツールと考え、導入しました。
―mieten導入によりどのような変化がありましたか?
従来は、スクリーンセーバーの起動、各種ソフトウェアの最新化など、「危険な状態を事前に予防する」セキュリティ面で重要である点について、注意喚起してもそれらが適切に設定されるか否かはPCを使用する各個人以外は確認できない状況でした。
海外拠点においては、国内以上に注意喚起が難しく、課題となっていましたが、mietenを導入してからは、自動的に未設定の社員に対して注意喚起ができるようになりました。その結果、確実に最新化ができるようになり、組織全体としてのセキュリティレベルが向上しました。
マネジメントをする社員が点検状況を確認できるようになったので、安心につながっています。
■mietenが描くPCセキュリティの新常識
―最後に、mietenを通じてどのような社会や顧客の課題を解決していきたいとお考えですか?
長房:
mietenの価値はセキュリティ点検の質をさらに高めていくことにありますが、私はそれだけにとどまらないと考えています。mietenは、PCセキュリティを管理する側と使用する側、双方からセキュリティ点検の状況を「見える化」することで、組織全体のセキュリティ意識を根本から変えていく力を持っているのです。これこそが、mietenの最大の魅力であり、私が最も面白いと感じている部分です。
現実にはセキュリティインシデントの予防に対する社会の意識はまだまだ低いと感じています。サイバー攻撃によって業務が停止し、企業の存続すら危ぶまれる事態は、どの組織にも起こり得るのです。多くの被害は、基本的なセキュリティ対策や点検が不十分であることに起因しています。だからこそ、私たちはこの重要性を一人でも多くの方に伝え、確実に浸透させていかなければなりません。
セキュアシステム事業部 第二ビジネスユニット マネージャー 長房 真広
千歳:
セキュリティ対策に力を入れている企業はまだまだ少ないということを痛感しています。しかし、近年セキュリティ対策が不十分なことが原因でランサムウェアなどのサイバー攻撃によるインシデントは多発しており、個人のPC管理が不十分であったことで企業として大きな被害を受けてしまうといった事案もたびたび見受けられます。
私たちは、すべての企業がPCセキュリティの管理を徹底できる世界を実現させることを目指しています。その中で、開発担当としてセキュリティを強固にしつつも、使いやすさを両立できる製品として、多くのお客さまに信頼いただけるよう、点検項目の拡充やお客さまのニーズに合わせた開発を進めていきたいと考えています。
小滝:
プロダクトはお客さまの信用を得て、長く使い続けていただくことが大事だと思うので、保守としては丁寧なヒアリングや対応を心掛けていきたいですね。
また、私自身が社内の情報システム部門に所属していた経験を活かして、mietenの導入を通してお客さま内のPCセキュリティ点検の業務プロセス改善などにも取り組んでいきたいです。mietenが今後もお客さまに信頼されるプロダクトであり続けるために努力し続けていきます。
朝倉:
多くの企業では、セキュリティに関する社内ルールはあっても、それが実際に業務の中で機能していないこともまだまだ多いように感じています。組織全体でセキュリティ対策を徹底する必要性が高まっているため、私たちは提案を通じてお客さまにその重要性を伝えていきたいと考えています。
mietenを通じて『セキュリティ点検はやって当たり前』という文化を社会に浸透させていきたいですね。
mietenは、サービス開発で初めて取り組んだ数々の課題や困難を一つひとつ乗り越え、多くの試行錯誤を重ねてきた挑戦の結晶です。チームの情熱と技術が結集し、使いやすさと高い安全性を両立させたこのサービスは、未来のビジネスを守る新たな盾となります。これからもmietenは、セキュリティインシデントの予防に対する社会の意識を高めていくために、挑戦を恐れず、革新を追い求め続けていきます。
※mietenはNTTテクノクロス株式会社の登録商標です。
※記載されている商品名・会社名などの固有名詞は一般に該当する会社もしくは組織の商標または登録商標です。
※本記事の内容は執筆時点のものです。
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