エンジニアが本気で学⽣向けプログラミング教育をやってみた
NTTテクノクロスに在籍するエンジニアがおくる「⼩学⽣向けプログラミング教育」のブログです。
エンジニアが本気で小学生向けプログラミング教育をやってみた
- 2024年12月26日公開
はじめに
こんにちは。NTTテクノクロス IOWNデジタルツインプラットフォーム事業部の神長 貴博(ジンチョウ タカヒロ)です。 今回のブログでは、9-12月の活動のトピックを紹介します。
活動トピック
9月 東京都立晴海高等学校『晴海祭』
6月-9月の間で行なった『プログラミング教育』の成果発表を聞きに東京都立晴海高等学校の文化祭『晴海祭』に行ってきました。
プログラミング教育は、(『MIT App Inventor2 日本語化プロジェクト』)を利用してAndroidアプリを開発する取り組みを行いました。具体的には、アプリのベースはNTTテクノクロスで提供し、アプリの機能とUIのブラッシュアップを生徒達が3班に分かれて作り上げていくといった内容です。
『晴海祭』では、開発したアプリのお披露目とまとめのプレゼンが行われました。当初は、受験生でもある生徒達が短期間で成果を出すことは難しいのでは?と思っていましたが、蓋を開けてみると想像の遥か上を行く出来栄えと各班共に開発過程ででた課題を自分達なりに分析、解決、必要に応じて方針の変更を行いながら見事に完走しました。取り組みに参加した社員皆、よく工夫し頑張ったが正直な感想です。素晴らしいの一言に尽きます。
次年度は、これから学校と詳細をつめて行くことになりますが、今年の経験と得た成果・課題を活かしてより良い活動にして行きたいと思ってます。
10月 第50回全日本教育工学研究協議会全国大会
全日本教育工学研究協議会全国大会(赤坂学園赤坂中学校)で以下タイトルの発表を行いました。
本活動も今回で5回目になります。我々が行っているプログラミング・キャリア教育のノウハウ、活動過程で得た成果や課題を教育現場に共有することでICT活用の推進に繋がればと思ってます。
IT要素を取り入れたクラブ活動の推進と生徒の興味・関心の追求
5-10月度の期間で行った川崎市立上丸子小学校 イラストクラブの34名の生徒を対象とした以下研究の発表を行いました。
■ 研究概要
「手書きのイラストからアニメーションを作る」活動を導入して以下事項をより活性化する研究。
- 異学年交流:児童間でアナログ・デジタル双方の作品を共有し、異学年間の交流をより活性化する。
- 児童達の発想の変化:作品の共有過程で様々な作品に触れることで、発想を膨らませる変化を促す。
- 児童達の興味・関心の追求:イラストがアニメーションになることの楽しさや嬉しさを体感することで、ツールやソフトを意識させることなく、新たな興味や関心の追求が自然と行える環境を作り出す。
活動を通して得た成果や課題は、以下になります。これらを活かし、次年度の川崎市立上丸子小学校 イラストクラブで活動をより良いものにして行きたいと考えてます。
■ 成果
児童への説明前に教員側に対してもレクチャーを実施したことで、講師陣だけでなく普段児童が接している教員に対しても相談が可能な状況を作れました。
アニメーションの原画を作成する前にアニメーションの原理・原則を説明。児童が作画前に検討する時間を設けたことで「完成イメージ」を持って作品の制作に取り組めました。
試行錯誤の過程で得たツールやソフト、プログラミングの知識を最大限活用して良いアニメーションを作ろうと努力していました。
- 上級生の児童がペイントソフトを使えない下級生の児童にやり方を教え、作品の完成度をあげながら使いこなせるまで成長しました。
- アニメーション作成を通じてツールやソフト、プログラミングが有効な道具であることを児童が自然と認識したことと言え、プログラミングを学習に導入する場合に児童が興味・関心を持ち、それを追求する題材や環境を作り出すことが非常に重要であることが証明されました。
■ 課題
ツールやソフトの選定。プログラミングに関する知識、有識者に頼れる学校とそうでない学校がある。その為、各学校で取り組んでいる内容を共有、活用する仕組み作りが必要と考えます。
- 今まで培ってきた学校教育のノウハウを電子書籍(無料)でまとめ、誰でも手にいれる仕組みを提供する様にしました。(https://techbookfest.org/product/rsuUCAJG0hqY7ZBMkWQNy0?productVariantID=aaMNBZH37u6Aa1s0JX1imi)
異動等によって学校内で教員側の体制の変化が生じ、クラブの担当者が毎年異なることで過去のノウハウが定着しない可能性が危惧される。その為、ノウハウを共有できる仕組み作りが必要と考えます。
- 上丸子小学校の教員と協力してノウハウの引き継ぎが行える仕組み作りを今後行なっていく。
ITエンジニアによるキャリア教育プログラムの実践と改善
キャリア教育を主に担当している神原 健一です。2017年9月-2024年7月に関東圏内小学生(高学年)/中学生/高校生/大学生向け計12 回/1 回あたりの対象人数:数名〜100名程度に実施したキャリア教育を振り返り、研修発表を行いました。その内容を一部抜粋してご紹介します。
■ キャリア教育の現状と課題
2020年から全国の小学校でプログラミング教育が導入されており、キャリア教育を実施する前の時点で、生徒はPCもしくはタブレットの基本的な操作方法や初歩的なプログラミングなど一定レベルのICTに関する知識を有する状況になってきている。その延長線として、ICTを専門に扱う職業がどのようなものであるか生徒たちに伝えたい要望はある一方、実際の仕事の具体的な内容については、その経験を有していないと実態に即した内容を伝えるのが難しいという課題を抱えている。
■ キャリア教育の進め方の変更
キャリア教育を実施後、多くの気づきを得た。そこで、対象の学年、授業の時間、および、生徒の前提知識のレベルに合わせ、実施内容を都度、カスタマイズする方式に変更した。具体的には、コンテンツを以下の3つに分けておき、その内容を組み合わせることで、柔軟にカスタマイズできるようにした。
- (a)コンテンツ(基本編)
- 対象:生徒の学年に関わらず、全ての年齢層
- 例:具体的な仕事内容、 ITを活用する職種、1日の業務の流れなど
- (b)コンテンツ(応用編)
- 対象:ICT に関する一定知識を既に有していると想定される高校生・大学生に対して、追加実施
- 例:ITエンジニアとプログラミングの関係、ITエンジニアに求められるスキル
- (c)コンテンツ(オプション編)
- 対象:講義の時間に余裕がある場合に実施
- 例:(アイスブレイクとして)、お互いの自己紹介(時間がない場合や対象者の数が多い場合(目安として20人以上)、講師側のみ実施)
■ 結論
- 生徒の学年など予め有している前提知識を可能な限り把握し、それを加味した上で、キャリア教育に含めるべき内容、あえて含めない内容を精査し、実施することで、生徒のレベルに合わせた理解度の高い教育を行うことができる。
7年に渡るキャリア教育を通じて、少なからず、ITエンジニアという職業の理解促進につなげられたことをうれしく思います。また、コンテンツ準備に関しても、進め方を改訂するとともに、アイディア出しに生成AIを活用することで、準備にかかる稼働を平均で約40%軽減することができました。引き続き、さらなる生成AI活用や後進育成などを通じて、学校からの依頼をより受け易い体制を構築していきたいと考えています。
11月 川崎市立上丸子小学校 クラブ活動
9-11月度のプログラミングクラブ・イラストクラブの活動の様子をお伝えします。
プログラミングクラブ
プログラミングクラブでは晴海高校の活動と同じく、MIT App Inventorを使用してAndroidアプリを作成しています。最初はApp Inventorの使い方に慣れてもらい、 ボタンをクリックすると画面に文字を表示する、音声認識を使って喋った内容を画面に表示する、喋った音声に応じて画面に表示するテキストを変える、といった流れで段階的に進めてきました。
サンプルのアプリを動かせるようになると、それぞれが好みに合うようにアレンジして、グループの中でお互い紹介し合う姿、わからないメンバーに対して教え合う姿が見受けられました。子供達の活動に対する積極的な姿勢に感銘を受けています。 残り2回の活動で各グループ1つのアプリを作ってもらい、最終回はその作品を発表してもらう時間を設ける予定です。最後まで子供たちの積極的な姿勢に負けないように、活動をサポートしていきたいと思います。
イラストクラブ
イラストクラブでは、9月度から『Scratch』を利用したアニメーション作成を行いました。 最初は、紙に描いたイラストを生徒のPCで撮影、画像ファイルをScratchにインポートしてアニメーションを作成。完成後は、ペイントソフトを利用して作画を行い、画像ファイルをScratchにインポートしてアニメーションを作成といった具合で段階的に実施内容をレベルアップさせていく手法を取りました。
毎年驚かされるのですが、ペイントソフトの利用経験が無い生徒も自分の好きと興味がキッカケとなり、取り組み過程で自然とペイントソフトを使いこなせる様になります。この活動を行う上で、生徒の好きと興味を引き出すことが如何に重要であるかを活動終盤になる度に気付かされます。
本年度の活動は、残すところ後3回。最後まで、生徒の好きと興味を引き出すことに重点を置き、活動を行なっていきたいと思います。
最後に
最後までブログを読んで頂き、ありがとう御座いました。次回も楽しみにして頂ければと思います。それでは。
モバイルアプリの開発をしてます。趣味は「フェス・ライブ」、「ランニング」、「食べ歩き」です。