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SIP製品の開発・テスト工程を効率化する「ActiveSIP」

SIP製品の開発・テスト工程を効率化する「ActiveSIP」

これまでの多数の家電機器を製造、販売してきた大手家電メーカーの港南CE社。 家電は将来、すべてネットワークにつながると目されています。同社では今日も 製品企画部とソフトウェア開発部のスタッフが集合して会議が行われています。 ネットワーク対応家電製品とそのシステム構築という大きな課題への方策を、仮 想事例を通じてご紹介いたします。

ここは大手家電メーカーの港南CE社。これまでの多数の家電機器を製造、販売してきた。家電は将来、すべてネットワークにつながると目されている。このシステムの構築は社内でも大きな課題となっており、今日も製品企画部とソフトウェア開発部のスタッフが集合して会議が行われているのであった。

(株)港南CEとその他の登場人物は、このコラムのために用意された架空の存在であり、実在しません。また、実在する類似または一致する名称のいかなる個人、団体などとも関係ありません。このコラムの内容に関して、特定のモデルは存在しません。

1.アプリ開発に専念したいソフトウェア開発者

製品のネットワーク家電化を進めたい港南CE社。その会議で大きな問題となっているのは、ファームウェア開発を担当するスタッフの抵抗だった。もちろん彼らも必要性は感じているが、ファームウェアへのプロトコル組み込み、サーバサイドの品質保証など課題は山積み。上位のアプリケーション開発がおろそかになる懸念も抱えている。

門倉● ネットワーク家電の普及は現実的な段階に向かいつつあります。この波に乗り遅れないよう、いつでも投入できる体制を作りあげておきたい。システムの基盤となるソフトウェアの開発はキーポイントだと考えています。
竹下● もちろん開発の必要性は理解していますが、昨今の人員削減の折、新しくネットワーク制御ソフトウェアを開発することにまで手が回らないのが実情です。
安積● ユーザが直接目に触れたり操作する上位アプリケーションをさらに洗練させたいのも本音です。ネットワーク制御系は動いて当然なのでテストが大変ですが、そのわりにユーザに直接アピールできないのが切ないところです。

Consultant EYE

家電に限らず、あらゆる電気製品がネットワークへ繋がるという未来図は、いよいよ現実味を帯びてきました。その基盤となる ネットワーク接続を行うファームウェアの開発 は、あらゆる業界で大きな課題になっています。世界的な不況のなか、開発部隊のリソースも縮小傾向にあり、新規開発に耐え得る人員を抱える企業は一握りではないでしょうか。今、最も必要なことは効率化と言えます。

2.求められるのは信頼性と柔軟性

ソフトウェア開発部の意向は上層部へ訴えるとして、ネットワーク家電に組み込むべきネットワーク仕様の方向性だけでも明確にしておきたい。家電という製品の性格上、すでに存在するネットワーク機器以上に、リテラシーの低いユーザが利用することを想定しなければならない。求められる要件に対して、次世代ネットワーク(NGN)と、そのシグナリングプロトコルでもあるSIPの存在がクローズアップされた。

竹下● ネットワークといっても、現在はインターネット網が広がっていますが、将来的にはNGNが各家庭に入り込む可能性があります。IPネットワークかNGNか、というのは難しい判断が迫られますね。
門倉● ファームウェアは柔軟に対応できるようにできないでしょうか。ネットワーク網はもちろん、さまざまなリテラシーのユーザが使うことを考えると、データ通信だけでは足りないかも知れないから、柔軟に対応できるプロトコルがいいと思います。もちろん信頼性は最重要課題です。
安積● そうなると、インターネットで使われるプロトコルよりも、NGNのシグナリングプロトコルとして使われるSIPをベースにしたほうがいいかも知れませんね。ネットワーク層やトランポート層を問わないので、状況を見て柔軟に対応していけますし。

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ネットワーク機器ということを意識しないユーザも含め、 不特定多数のユーザが利用することを想定 しなければならないネットワーク家電では、 高い信頼性と柔軟性が求められる といえるでしょう。
また、NGNのシグナリングプロトコルとして用いられているSIPは、下位レイヤを問わず利用できるうえ、データ以外にも音声・映像といったさまざまなデータ交換に活用可能です。ネットワーク家電の要件を満たすプロトコルとして有力な選択肢といえます。

3.大規模システムと相互接続性がネックに

SIPのインプリメントを前提にネットワーク家電をリリースすることを検討した三人。SIPという相互接続性を求められるプロトコルである点と、販売数が膨大になる可能性を検討しなければならない家電である点の二つに潜在する、ある課題が浮かび上がった。

門倉● 家電製品なので数千どころか、数万という単位の販売数も検討しなければなりません。サーバ側のシステムも大規模なものが求められるのではないでしょうか。
竹下● 怖いのは一斉にリクエストが届いたときですね。例えば、ファームの自動アップデートが考えられます。アップデートの通知を受けた機器が一斉にリクエストを返したら、短時間に数万のリクエストが届くことになります。サーバ側はそれに耐えるシステムにしなければなりません。
安積● 家電同士が接続されるP2Pコミュニケーションも想定しなければなりません。SIPは高い相互接続性を持つプロトコルですが、メーカーや機器ごとの”方言”も多くて、相互接続テストの難航が予想されます。

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家電のように想定台数を多く設定する必要があるネットワーク機器の場合、サーバ側もそれに耐え得る仕様が求められます。SIPは一定以上のクオリティを保った通信を行いやすいプロトコルという点では見合いますが、 万を数えるようなリクエストに対応できるよう最適化 する作業は一筋縄ではいきません。
また、SIPはその拡張性、柔軟性ゆえに、 各メーカー・各機器の独自仕様が盛り込まれた”方言”が存在 しているのも事実で、相互接続性を保証するための バリデージョン作業には多大な労力と時間 を要します。

4.大規模システムへ適応できる「ActiveSIP Stack Library」

SIPベースの大規模システムをフルスクラッチで構築するのは、あまりに負担が大きいと判断した三人は、他社が提供するライブラリを導入するのが現実的と判断した。そこで浮上したのが、数万クライアントに達するような大規模システムにも適応できる「ActiveSIP Stack Library」である。NTTソフトウェアの寺西氏を招いて解説してもらうことにした。

安積● SIPのスタックライブラリはいくつか出てるんですが、数万台規模に適応できるライブラリは限られるんですよね。
寺西● ActiveSIP Stack LibraryはWindowsベースで40万BHCA Linuxベースで100万BHCAの性能を持っていますので、数万規模のクライアントが想定される環境にも適応できます。
竹下● ライブラリを使うとなると、ある程度の相互接続性は期待したいところです。テスト工程を少しでも減らせればと考えていますが。
寺西● 標準のRFCだけでなくインターネットドラフトにも対応済みです。よほど標準から外れた実装をしている機器でない限り、相互接続性の面でも安心してご利用いただけると思いますよ。NTTグループはSIPに早期から取り組んできたのでノウハウも多く、弊社ではSIPベースのシステム開発受託も行っています。

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SIPライブラリとして提供されているものは少なくありませんが、クライアント機器向けのライブラリであったり、中規模システム向けの製品が主流です。 ActiveSIP Stack Libraryは数万台に及ぶような大規模システムに対応できるライブラリである点が大きな特長 となっています。
また、 早期からSIPに取り組んできたことによるノウハウの蓄積、国際的な相互接続検証への積極的な参加 などを行っていますので、安心してご利用いただけるライブラリになっています。

ActiveSIP Stack Library 適用イメージ

5.運用テストを効率化する「ActiveSIP Simulation Tester」

SIPのインプリメント作業はスタックライブラリの活用でカバーできるとしても、数万台規模の運用を想定しなければならないテストに対する不安は大きい。この工程のソリューションとしてNTTソフトウェアの寺西氏が紹介したのが「ActiveSIP Simulation Tester」である。

門倉● 信頼性第一の家電だけにテストは徹底的に行う必要があります。だが、数万台規模のテストとなると何らかの対策を打たなければならないでしょうな。
寺西● 当社のActiveSIP Simulation Testerは、疑似クライアントを作って、1台のSimulation Testerで数千台規模の負荷テストを実施できます。複数台を並べることで数万台規模も可能です。また、検査データがあらかじめ多数用意されていますし、任意のシーケンスも簡単に作成できますから、さまざまな試験パターンを試せますよ。
竹下● しかし、SIPのシミュレーションといえば、ハードウェアとセットになっていて非常に高価な印象があるのですが……。
寺西● いえいえ。ActiveSIP Simulation Testerはソフトウェア製品になっています。汎用PCに導入して利用可能ですので、コストを抑えることができるんです。

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信頼性はテスト工程で決まるといっても過言ではありません。ActiveSIP Simulation Testerは 網やクライアント、サーバを仮想的に構築し、作成したプロダクトを検証可能。さまざまなテストシーケンスがあらかじめ用意 されているだけでなく、 独自のシーケンスも簡単に作成できます
また、ソフトウェア製品として提供されているのも大きな特長で、企業が持つ 汎用PCを使用し、低コスト利用できる ソリューションとなっています。

適用イメージ

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著者プロフィール
尾崎 公望
尾崎 公望

NTTソフトウェア株式会社