解説

RAGとは何か?企業における生成AIの活用方法をご紹介

RAG

RAG解説の背景
生成AIの活用が進まない日本企業

ChatGPTの登場以来、ネットニュースで生成AIの話題を目にしない日はありません。しかし、日本企業の生成AI導入状況は、他国に比べて遅れをとっています。総務省の令和6年情報通信白書によると、生成AIを積極的に活用する企業はわずか15.7%にとどまっています。

その理由の一つとして、セキュリティに対する漠然とした不安があるようです。しかし、同白書によると、実際に生成AIを活用している企業の約75%が、業務効率化や人材不足解消などのポジティブな回答をしています。

本解説では、生成AIを企業に導入する際の具体的なイメージをお伝えし、業務効率化や人材不足解消に向けたヒントを提供します。

Q. 生成AIの活用方針が定まっているか​

出典)総務省 令和6年情報通信白書 5. 生成AIの活用方針策定状況 | 白書掲載番号(Ⅰ-5-1-4)

企業で生成AIを活用するために不可欠なRAG

企業における生成AIの活用は、業務効率化や意思決定の質向上に大きく貢献します。しかし、単に生成AIシステムを導入するだけでは、企業における生成AI活用ニーズには応えきれません。そもそも生成AIという言葉で一括りにしていますが、様々な生成AI技術が存在します。

ここでは、ChatGPTで有名になった大規模言語モデル(LLM)と、LLMを企業で活用するために必要となるRAG(Retrieval-Augmented Generation)という技術を中心に解説します。

企業における生成AI活用時の課題

ChatGPTで有名になったLLMは、膨大なデータを学習しています。そのため、一般教養に対する回答能力はとても優れていますが、一方で、企業内の特定のルールや手続きには対応できないという課題が存在します。なぜなら、LLMが事前に学習している情報は、インターネット上などの公開情報であり、企業固有のルールや規範類などの非公開情報は学習していないため、それらを考慮した回答ができないからです。

たとえば、あなたの会社で新たにPCを購入する場合、あなたの会社の購入手続きや決裁権限に関する情報が必要ですが、LLMはあなたの会社の購入手続きや決裁権限は学習していないため、正しい回答ができません。

RAGとは企業内の情報を参照して回答する仕組み

上述のようなLLMの課題を解消するために、企業内の関連情報を参照し回答する仕組みが必要です。それが、RAG(Retrieval-Augmented Generation)と呼ばれる技術です。
RAGを活用すると、企業内の様々な文書を参照して生成AIが回答を生成します。たとえば、生成AIは、社内の購入手続きマニュアルや過去の問い合わせ履歴を参照することで、あなたの会社の購入手続きを案内することが可能になるのです。

RAGの導入事例

ある企業では、RAGを使ってITヘルプデスクの業務効率化に取り組みました。最初に、よくある質問(FAQ)を生成AIが理解しやすい形式に変換して登録しました。
次に、過去の問い合わせ内容を整理してドキュメント化しました。これにより、RAGは社内のマニュアルや履歴を参照し、迅速かつ正確な回答を生成できるようになりました。
その結果、従業員が対応手順を探す時間が大幅に減り、生産性が向上しました。この企業では、今後、業務効率化についてKPIを設定して定量的に評価する計画です。

RAGサービスの登場、ChatTXのご紹介

2022年11月にChatGPTが登場して以来、国内では多くのRAGサービスが登場しています。RAGは一般に、レトリーバ(情報検索)とジェネレータ(生成)の2つの要素から構成されています。しかし、このシンプルな構造では、正確な回答を生成することが難しく、各社のRAGサービスでは、様々な工夫が試されています。

NTTテクノクロスの「ChatTX」では、レトリーバとジェネレータの間に「アグリゲータ」という機構を設けて、回答精度の向上に取り組んでいます。ChatTXのアグリゲータは、レトリーバがドキュメントストアから取得した情報を多角的に評価し、情報の取捨選択を行います。回答生成に貢献できない情報を排除し、回答生成時に不足している情報をドキュメントストアから再取得するなどの最適化も実施します。これにより、従来は適切な回答ができなかった下記事例でも、正確な回答を生成できるようになりました。

RAG(Retrieval Augmented Generation)

企業でRAGを活用するためのポイント

RAGを効果的に活用するためには、以下のポイントを考慮してRAGサービスを選定し、企業内の情報やプロセスを整備することが重要です。

  1. RAGサービス選定基準の明確化(回答精度、セキュリティ、更新性)
    • 自社のニーズに合った、情報検索の精度や生成能力が高いRAGサービスを選ぶことが重要です。複数のサービスを比較し、実際の業務に最も適したものを選定しましょう。
    • データ保護やプライバシーに関するセキュリティ対策がしっかりしている信頼できるサービスを選ぶことが不可欠です。
    • 生成AIは進化が速く、常にアップデートが必要な領域です。進化のスピードに追従できる技術力と資金力のあるサービスを選定することが長い目で見た時には重要になってきます。
  2. 企業固有の情報の整備と業務プロセスの見直し
    • RAGを効果的に活用するためには、登録する企業固有の情報を整備し、段階的に業務プロセスを見直すことが重要です。まずは、どういった情報や書類をRAGデータとして整備するかを計画し、継続的な改善を行うことで、生成AIの活用が定着します。
    • 社員向けのルールや手続きの文書化を行い、従業員への教育プログラムをあわせて実施することで、RAGを活用した業務の効率化がさらに促進し、生産性の向上が期待できます。

まとめ

RAGとは、企業が生成AIを効果的に活用するための優れた仕組みです。企業固有の情報を参照して適切な回答を生成することで、業務の効率化や意思決定の質向上が期待できます。特に、社内の問い合わせを効率化することで、企業全体の生産性が大きく向上します。

また、信頼できるSaaSベンダーの選定や、セキュリティ対策が施された安心・安全な生成AI環境の選定は、活用において非常に重要です。

あなたの会社でも生成AIやRAGを積極的に活用し、働きやすく生産性の高い新たな可能性を探ってみてください。生成AIの導入は、業務の未来を変える大きな一歩となるでしょう。

この記事を書いた人

NTTテクノクロス株式会社

ディスティングイッシュト ビジネスプロデューサー

河村 誠司

NTT研究所の先端技術と、市中技術・製品を掛け合わせたサービスの立ち上げに豊富な実績あり。近年では、音声マイニングやコールセンター向けソリューションの企画・開発に取り組み、ChatTXの立ち上げにも参画。

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