概要

 20兆円を超えるとされる日本の電力市場。従来は東京電力や関西電力など電気事業法で認可された10社のみが事業展開する業界だったが、2016年4月には規制緩和が図られ、小売の全面自由化がスタートしたことは記憶に新しい。競争原理が働くことで、一般家庭など小規模な需要家にとっては、より有利な契約プランを選べるようになったことは朗報だ。
 一方で小売電気事業者、いわゆる"新電力"は全国で600社近くを数えるようになった。「事業者サイドから見れば、一定の大きさのパイを奪い合うようなもので、安穏とはしていられない業界なのです」──。そう話すのは、ジニーエナジーの小泉智子氏(オペレーションズ ディレクター)だ。
 顧客と友好的な関係を築き、長期にわたって契約を続けてもらうには、密なコミュニケーションが欠かせない。毎月の電力使用状況とそれに紐付く請求明細、あるいは時々のお勧めキャンペーン情報などを確実に知らせることは全ての礎となる取り組みであり、それらの業務を支える基盤として活用しているのがNTTテクノクロスのCRM(顧客関係管理)ソリューション「MarketingAuthority(以下、MA)」だ。ジニーエナジーはSaaSとしての形態で、月々の利用実態に即した料金を支払う契約で導入している。

課題

顧客と接するチャネルが友好関係維持の礎

 顧客獲得合戦が熾烈とあって、中には、目先の契約数を伸ばすために大胆なキャッシュバックキャンペーンを売りにしているような例もしばしば見られる。そうした状況下で小泉氏は「当社は、内部的には独自ノウハウによる好条件での電力調達力が強みである一方、お客さまに対しては契約プランをシンプルに絞り込んだ分かりやすさと、電気を多く利用される方が長期利用で必ず安くなるお得感を全面に出して営業しています」と特長を説明する。
 もっとも、新電力を積極的に使う顧客層は総じてコストコンシャスで、他社から魅力的な提案があれば乗り換えてしまう可能性も少なくない。メールや電話など顧客と接するチャネルは、顧客一人ひとりに丁寧に対応することで信頼感を醸成し、ひいては長期にわたって契約を続けてもらうための生命線となるものだ。
 小泉氏が統括するオペレーションズという部署は、契約の申し込みに始まり、切替手続き、給電開始のお知らせ、月々の請求業務や入金確認、場合によっては解約まで含めて顧客のライフサイクルに沿った実務を担っている。その現場において、「メール配信を中心としたお客さまとの双方向でのやり取りを支えているのがMarketingAuthorityです」(小泉氏)。
 また、コールセンター部門でも活用が進んでいる。小林俊氏(カスタマーケア マネージャー)は、「当社のお客さま全ての現状ステイタスを一元的に管理する統合データベースの位置付けにあり、電話などによる問い合わせに迅速かつ正確に、そして丁寧に対応する上で無くてはならない存在です。併せて、対応履歴も記録するようにしています」と話す。

解決へのアプローチ

前職でMAを使っていたキーパーソンの評価で導入を決断

 MAを選択した背景には何があったのだろうか。「実は私が同じ業界の前職でユーザーだったんです。キメ細かいセグメントでの顧客管理や、それぞれに合わせたコンテンツ配信、アクション後の分析機能などがとても使いやすくて好印象を持っていました」と小泉氏は振り返る。ジニーエナジーが日本進出するに当たっての立ち上げメンバーの一人として加わった小泉氏。その豊富な実務経験からの推奨があり、「IT専任者がいない企業に手厚くサポートしてくれるのも安心材料です」との言葉も加われば異論はなく、一択で導入が決まった。
 NTTテクノクロスとしても小売電力業界での数多くの実績がある。ヒアリングを通じた要件の整理、実装段階での設定やチューニングも順調に進んだという。ジニーエナジーが準備期間を経て事業スタートの体制をほぼ整えたのは2019年初頭の頃だ。1~2月は主にシステムのテスト期間に充てて細部を詰め、晴れて3月から代理店も使ったビジネスが動き出した。

ソリューションとその成果

中核となるのは顧客ごとに最適化したメール配信

 実務での使い方をもう少し詳しく見てみよう。小売電力業界には、電力広域的運営推進機関(OCCTO)が運用する「スイッチング支援システム」がある。託送契約の異動に伴う諸手続や、契約電力やメーター機器などの情報管理、さらには月々の使用量などの情報管理を担うシステムで、小売事業者にとって手間ひまのかかる事務作業を軽減するためのものだ。要は、各家庭をはじめとして電力を受けている顧客の基本的な情報はOCCTOのシステムにおいて一元的に管理されているということだ。
 ジニーエナジーは自社の顧客に関わるデータを、このOCCTOのシステムから定期的に入手する。電力CISと呼ぶ基幹業務システムを介してMAに取り込む流れだ。その上で、MAに備わる機能を用いて、顧客それぞれに合わせたメール文面を自動的に作成して配信するのが典型的な使い方となる。月々の請求額のお知らせを例にとれば、定型文に顧客名や契約プラン名、当該月の単価、消費量、請求額といった内容を、必要に応じて参照リンク先のURLも含めながら自動的に差し込んで送信する。手作業で対処するとなると膨大な時間がかかるが、これを正確かつ迅速に済ませることができる。

データを自在にハンドリングできることを評価

 もっとも、OCCTOのシステムから得られるのは、契約済みの顧客のデータに限られ、申し込み~切替手続き完了の間にある顧客の情報は別途取り入れる工夫を盛り込んでいる。これにより、「申し込み書類に不備があって後日電話で回答頂くようなケースや、一旦は申し込みがあったものの諸般の事情でキャンセルになった場合などの対応も、すべてMA上の情報を参照しながら顧客と対話できるのは業務品質を維持する上でとても役立っています」と小林氏は強調する。
 メールを使う習慣がないことから請求額をはじめとするお知らせについて郵送を希望する顧客も少なからずいる。その場合、印刷会社にデータ一式を渡して封入書類を印刷してもらうことになるが「MAを使えば、顧客ごとに必要となる元データを手早く取り揃えることができます。用途に応じて自在にデータをハンドリングできるという点において、使い勝手がとてもいいですね」と荒井千晴氏(オペレーションズ・アナリスト)の評価は高い。

今後の展開

改善を繰り返しながらデータの価値を最大化させていく

 顧客からの信頼感こそがビジネス上の生命線。「私どもから情報をお届けするにしても、お客さまからお問い合わせ頂くにしてもその時々に的確なやり取りをすることが起点となります。MAには、すべての拠り所となる情報が常に整備されているという安心感は絶大ですね」とは小泉氏の弁だ。
 そうして使い込んでくる中で、幾つかの改善テーマも見えてきた。「コールセンター部門で頻繁に使う顧客情報の参照画面サイズをもう少し大きくしたり、対応履歴を記録する際のカテゴリーをキメ細かくしたりといったことを課題に挙げています」(小林氏)、「OCCTOのシステムからデータを取り込む頻度やタイミングの工夫などで、より実態に近い“リアルタイム性”を追求したいですね」(荒井氏)などと、利用部門ならではの要求が寄せられている。これらについては、NTTテクノクロスと議論しながら、実務により最適化させる形でチューニングを図っていく計画だという。
 業容拡大と共に蓄積してきたデータは、次なる施策を打っていくための“宝の山”でもある。「データの分析によってPDCAサイクルを回し、当社が選ばれるための知恵を絞っていくことにも積極的に取り組んでいかなければなりません。月々の利用料金につながっていることを承知で、解約されたお客様の情報もMAに残しているのはそのためです。また将来的には、代理店との情報共有にMAを活かしていくことも検討したいと思います」(小泉氏)とし、さらなる成長のためにMAをとことん使いこなしていく構えだ。

図 ジニーエナジーにおけるMarketingAuthorityの活用概要

お客様プロフィール

 お客様プロフィール
設立 2017(平成29)年6月
事業概要 小売電気事業
資本金 1,000万円
URL https://www.genie-energy.co.jp/